【論説】新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、福井県内の市町会の一部で6月定例会の一般質問の人数や時間を制限したり、会期を短縮したりする対応がみられた。だが県内の新規感染者は4月29日からゼロが続いている。県独自の緊急事態宣言も5月17日で解除された。こうした中で質問制限や会期短縮は適切な判断だったのか。むしろ第1波の総括に審議を尽くし、今後懸念される第2波に備えるべきではなかったか。

 こんなデータがある。早稲田大マニフェスト研究所が行ったアンケートで141議会から寄せられた回答によると、3月定例会での新型コロナ対策として▽傍聴の自粛・制限・中止(32・6%)▽一般質問・質疑の中止・取り下げ(19・9%)▽会期の縮小・延長(17%)―などがあった。

 福井県内の市町会の一部でも6月定例会で同様の対応がみられた。例えば県都の福井市会は、議場などの感染防止策をした上で会期を12日間に短縮。通常3日間の一般質問を2日間で行い、質問者数を5人以上の会派は2人、4人以下の会派は1人の計10人とした。無所属議員は5人以上の会派による質問枠の譲渡を可能とする仕組みにした。

 「3密」回避の趣旨は理解できる。だが公の場の議論に制限をかける対応には違和感が拭えない。なぜなら通常国会は会期末の17日まで連日審議し、16日に開会した福井県会も質問に人数制限したり、時間を短縮したりはしないからだ。

 新藤宗幸千葉大名誉教授(行政学)は、地方議会が発揮すべき役割と機能について「二元代表制の下、地域社会における多種多様な争点を公の場で首長サイドに提示することが第一にある。そして審議を通じてそれらの争点に政策としての優先順位を付け、住民に示すのが責務だ」と指摘。「コロナ禍でさまざまな課題が浮き彫りとなった今こそ、議員は感染防止策をした上で住民の実態を積極的に調査し、議会に持ち帰ることが大事。場合によっては会期延長で全ての議員が一般質問できるようにすべきではないか。萎縮しているようでは議会の存在意義が問われる」と強調する。

 誰もが平等に新型コロナに感染する恐れがあるが、リスクとダメージは仕事や生活環境で異なる。休業要請がもたらした影響も千差万別だ。社会のひずみは富める人より弱い立場の人に顕著に表れる不平等が改めて浮き彫りになった。緊急時だからこそ、住民に身近な地方議会は苦しむ人を守るとりでとして審議の充実で負託に応えるべきだ。

関連記事