【越山若水】「憲政の神様」と呼ばれた政治家尾崎行雄は、「議員の資格十カ条」なる文章を著書で公表した。1890年の国会開設の前年、欧米外遊中の見聞を基にまとめた。その第二条は「国会議員は道徳堅固なるを要す」である▼このこと自体には誰もが同意するが当たり前のことはつい見過ごされてしまい、かえって実行されない。「実行こそ重要なのだ」と付け加えている▼「政治とカネ」を巡る議員の不祥事が後を絶たない。昨年の参院選を巡る公選法違反(買収)の疑いで、前法相の河井克行衆院議員と妻の案里参院議員が逮捕された。票の取りまとめなどを依頼する目的で、地元県議らに現金を配った疑いが持たれている▼「法の番人」たる法務省のトップを務めながら自ら法を無視していたとあれば、とても議員の資格があるとは思えない。夫妻は疑惑を否定しているようだが、不明朗な金の流れなど説明責任を果たしてこなかった。金を受け取った側にも問題があろう▼尾崎は、「選挙は自分の生命財産その他の権利自由を守るための番人を選ぶことだ」と述べている。頼まれ、金をもらうから一票を入れるのではなく、有権者が選挙資金を出すぐらいでなければ信用のおける番人は出てくれないと考えていた。演説会では入場料を取りもした。連続25回の当選を果たした尾崎には、その信念を支えた大勢の選挙民がいた。

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