【越山若水】「五月蠅い」と書いて「うるさい」と読む。ではなぜそう読むのかと問われれば、答えに窮する。実は「五月蠅」という表記が先にあり、後に「うるさい」の当て字に使ったらしい▼万葉集にある山上憶良の長歌。「ことことは死ななと思へど五月蠅(さばへ)なす騒く児(こ)どもを打棄(うつ)てては死には知らず…」。老いて病身の憶良は、いっそ死んでしまいたいと思うが、五月のハエのように騒ぐ子どもたちを打ち捨てたままで死ねない、と苦しい胸の内を明かす▼つまり「五月蠅=さばえ」という言葉は、文字通り旧暦5月ごろに不快に飛び回るハエのこと。そこから「五月蠅なす」は「騒ぐ」「荒ぶる」「沸く」の枕詞(まくらことば)として使われた。明治になると樋口一葉や夏目漱石が自作で「五月蠅(うるさ)い」と書いて次第に定着したという▼さて「アフターコロナ」の観光や飲食業を支援する「Go To キャンペーン」。打撃の重大さと消費喚起の大切さは理解できるが、高額な事務委託費に批判が集中した。何しろ上限が事業費1・7兆円の約2割、3千億円を超える。公募はいったん中止となった▼安倍晋三首相が「空前絶後の規模」「百年に一度の危機から日本経済を守り抜く」と自賛した巨額の補正予算。そうは言っても、わが国は既に1100兆円もの借金を抱えている。甘い汁を吸おうと政権に群がる「五月の蠅」を野放しにはできない。

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