同じ楽曲の演奏や歌唱を募るミュージックリレーを企画した吉田詩織さん。参加者は国内外の約150人に上っている=福井県福井市

 脳性まひで、生活に必要な動作全てに介助が必要な吉田詩織さん(35)=福井県福井市=が、同じ楽曲の演奏や歌唱をSNS(会員制交流サイト)で募り1本の動画にまとめる“ミュージックリレー”に取り組んでいる。新型コロナウイルス感染症に対応する医療従事者をはじめ、全ての人にエールを送ろうと考案。参加者は15日現在、国内外の約150人に上っている。

 吉田さんは、未熟児で長く病院で暮らし、16歳になって初めて自宅に帰った。看護師の声を聞きながら言葉を覚え、小学生の時に「パパ」「ママ」といった単語を言えるようになった。現在は、ヘルパーのサービスやデイサービスを利用しながら県営住宅で1人暮らし。手指はわずかに動き、スマートフォンは使える。

 政府の緊急事態宣言による外出自粛中、SNSでは例えば卵焼き作りや腕立て伏せなど一つのテーマについてリレー形式で他の人につないでいくことが流行した。吉田さんにも3月下旬、友人から腕立て伏せのリレーが届いた。「私にはできない。でも、歌は歌える」。毎年夏に滞在する長野県軽井沢町で出会った看護師に相談し、ミュージックリレーを企画することを決めた。

 中心メンバーは吉田さんと軽井沢で出会った県外の5人。楽曲は「みんなを応援できるように」と「糸」を選んだ。

 フェイスブックで演奏や歌唱の動画を募ると、全国各地に加え、海外からも届いた。沖縄県からは三線の音色、ハワイで暮らす障害者の母親からは優しい歌声が送られてきた。ほかにも耳が聞こえない女性は手話を、歌が苦手な人は手作りの歌詞カードを撮影するなど、それぞれができることを動画に収めている。吉田さんもヘルパーと一緒に歌う動画を撮影した。

 音楽動画は6月末まで募り、SNS上でつながった編集者が1本にまとめる。

 「これまで、伝えたい思いがあっても、言葉を発することに自信がなかった」と吉田さん。今回、SNSで発信した「応援したい」という思いは次第に広がり、参加者は、友人からその友人へと広がった。

 「思いって伝わるんだね。胸が痛いほどうれしい。完成する前に泣いちゃいそう」と満面の笑みを見せる。自分から発案し、一つのものを作りあげるのは初めての経験で「責任感を持ってやり遂げたい」と話している。

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