【論説】発射すれば自国民を危機にさらす恐れがあり、改修したとしても多額の費用と年月を要するとあれば、この判断は当然だろう。地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」を巡り河野太郎防衛相が表明した計画停止はむしろ英断ともいえるのではないか。

 イージス・アショアは北朝鮮の弾道ミサイルを迎撃、防衛する狙いで、2017年12月に2基の導入を閣議決定。25年度以降の配備を予定し、18年5月に当時の小野寺五典防衛相が秋田、山口両県を配備候補地にすると表明した。

 ただ、当初1基約800億円としていたものが、その後1千億円弱と説明。最終的には2基の取得費に加え、30年間の運営経費などを入れて4500億円超、ミサイルなどを含めれば6千億円を超えるとみられ、防衛費を膨れ上がらせる要因にもなっていた。

 技術面でも当初から開発途上の装備品とされ、今回の計画停止では、迎撃ミサイルを発射した場合、ミサイルのブースター(推進補助装置)部分を自衛隊演習場内に確実に落下させられないことが理由となった。これを解消するにはミサイルの改修が避けられず、その費用には2千億円、期間として10年余りかかることで停止の判断を出さざるを得なかったという。

 河野氏は16日の衆院安全保障委員会で「導入を決めた当時としては正しかったが、コストと期間を考えると合理的な判断とは言えない」と述べたが、そもそも自衛隊内部からの取得要請はなく、貿易赤字を問題視するトランプ米大統領を喜ばせるための「爆買い」との見方が専らだった。

 防衛省は地元での説明で演習場内に落とせると強調してきた。秋田の適地調査では、ずさんなデータ処理が判明するなど度重なる「配備ありき」の説明は不誠実極まりない。政府は完全な撤回を早急に決定するとともに、これまでの経緯を徹底検証すべきだ。

 迎撃能力自体にも疑問符が付く以上、白紙撤回は逃れようがない。昨年版の防衛白書は、北朝鮮がミサイル能力を向上させ、通常の弾道ミサイルよりも低空を不規則な軌道で飛行するミサイルを開発している可能性があると指摘している。防衛省自身が迎撃を困難視している。

 契約額は約1800億円で、支出済みが約120億円に上るとしているが、さらなる巨額の浪費が生じる可能性は否定できない。加えて、国会の会期末を17日に控えたこの時期まで、なぜ公表しなかったのか。軟弱地盤のため工事の長期化が見込まれる沖縄の辺野古への米軍基地移設はなぜ見直さないのか。国会で議論されてしかるべき課題が山積みになっている。

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