【越山若水】「世界経済は現在、1930年代の大恐慌以来の景気後退を経験している」。世界銀行、経済協力開発機構(OECD)が最新の世界経済見通しで、2020年の実質経済成長率をそろって大幅に下方修正している▼コロナショックの猛威を改めて突きつけられているわけだが、マクロ経済の予測とあって実感は湧きにくい。ただコロナ禍と似ているとされる恐慌の史実、経験を学ぶことならできそうだ▼作家林芙美子は恐慌の最中にパリ、ロンドンを旅している。職業紹介所には失業者が行列をなし、林は「全く世界が飢えている感じ」と記す。日仏の為替の急変に直面し「円はこちらではガタ落ち」と残念がる▼震源地の米国事情は、米国経済史の大家、秋元英一さんの「世界大恐慌」(講談社学術文庫)に詳しい。恐慌の引き金となった株価大暴落は割賦販売や株の信用取引の過熱だった。消費支出の90%を女性が担って、その価値観である「良き生活とはグッズ・ライフ(物のある生活)」が暴落の背景にはあったようだ▼U・S・スティールでは22万人の正社員が4年でゼロになる。家を失った失業者が集いつくった村は、フーバー・シティーと呼ばれる。「好景気はもうそこまで来ている」と言い続け、楽観的だった大統領フーバーをやゆしたものだ。経済施策の規模、出動時期で教訓を残す。「小さすぎ、遅すぎた」

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