【越山若水】登山家にして発明家、技術者、教育者だった西堀栄三郎さんは、さまざまな分野で優れたリーダーとしても活躍した。第1次南極観測隊の越冬隊長や日本山岳会会長も務めた▼組織とは不完全な人間同士の集まりであるが、「共同の目的」を明確にして、人間性を大切にした運営で創造的な仕事ができると考えていた。例えば、南極越冬では1年間自ら便所掃除を買って出てくれた隊員がいた。コックは乏しい材料でごちそうを作ってくれた。補い合う精神が団結を強め、「人に喜ばれること」が、彼らの原動力となった▼統計的品質管理を日本の産業界に持ち込み戦後の工業発展に貢献したのも西堀さんだ。企業は「人類の福祉に貢献するのが目的」とし、理想的な企業経営の「四つの原則」を提唱した。法の上に良心を置いて運営し、企業間のモラルを守り、関係者が一致団結し、各人が役割に全力を尽くすこと―である(「技士道十五ケ条」)▼さて、関西電力役員らの金品受領問題で、関電が旧経営陣に損害賠償を求め提訴すると発表した。旧経営陣は多額の金品受領を知りつつ取締役会に報告せず、不適切な発注を防止する体制を築かなかったとされる▼「ただ組織を存続させるためだけに人倫や世論に背いた経営をしていたら、いずれは社会的に排斥される」。良心なき経営を戒めた西堀さんの残した言葉が重く響く。

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