【越山若水】100年前のことである。福井県が出した県令に「呼吸保護器」(レスピレーター)という言葉が頻繁に登場する。なにやら難しい機械のようではあるがマスクの呼称だ▼1918年秋から21年春にかけ大流行したスペイン風邪。県内でも人口の4割が罹患(りかん)して5千人以上が亡くなっている。冒頭の県令は20年1月、2波の最中に発令し、予防策としてマスク着用を定めている▼県文書館副館長の柳沢芙美子さんが内務省衛生局編の「流行性感冒」(平凡社)、県令のほか新聞記事を基に、県内のスペイン風邪状況をまとめた。都道府県は2波に直面しマスク普及に躍起となったようだ。静岡県などが廉価販売していたが、福井県の手法はユニークだった▼県は当初マスク販売を業者に任せている。だが価格協定の1個30銭が不徹底とみると直接15銭で交付する。併せて14警察署に所持数を調査させたところ、交付直後でも総戸数の7割、人口の4割に達したことを確認している。柳沢さんは「福井県とマスクは100年前から浅からぬ関わりがあったということでしょうか」とみる▼コロナ禍に際し全世帯向けにマスク購入あっせんに乗り出した県の姿勢と確かに二重写しになる。県は新たにマスクなどの医療品を県産化しようと補助事業に乗り出すとか。1波の教訓から得た事業だろう。2波に備え先人の英知もまた学びたい。

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