【越山若水】メキシコ東部の熱帯雨林で、巨大遺跡発見とのニュースには驚いた。紀元前1000年ごろ築かれたとみられるマヤ文明最古で最大の建造物だ。自然の岩盤に土を盛り造った大基壇。長さ約1・4キロ、幅400メートル、高さ15メートルに及ぶ▼定住生活が始まって間もなく、支配者もいない時期に共同作業で造ったらしい。マヤ文明には鉄器や大型の家畜がなかった。土を運ぶだけでも途方もない労働力だ。基壇は祭祀(さいし)の場とみられている。集団の結束を高めるため自発的に汗を流したのか、想像が膨らむ▼謎と神秘のベールに包まれていたマヤ文明だが、近年の調査で実像が明らかになってきた。今回は航空レーザー測量が発見につながり、福井県水月湖の湖底堆積物「年縞(ねんこう)」も年代解明などに役立っている▼青山和夫・茨城大教授の「マヤ文明」(岩波新書)によると、四大文明のような大河流域でなく、多様な自然環境で繁栄し、定住により文明が形成された。統一国家はなく多くの王国が共存した。多様性があったため、16世紀のスペイン人の侵略まで文明全体が崩壊することはなかった▼古典期マヤ文明は9世紀ごろ衰退したが、その根本要因について青山教授は人口過剰と環境破壊を挙げる。「多くの都市が繁栄を極めた結果、その限界を超えて衰退していった」。マヤ文明には現代文明が抱える課題解決のヒントがありそうだ。

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