ハローワーク福井の求人情報検索コーナー。新型コロナの影響で県内でも派遣切りに遭う人が出ている=福井県福井市

 「びっくりした。派遣は真っ先に切られてしまうんだ」―。福井県内の工場で働いていた30代の由希さん=仮名=は5月初め、派遣元から「数日後に仕事がなくなる」と連絡を受けた。契約途中で解除する、いわゆる「派遣切り」だ。

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 勤め始めて1年ほど。派遣で働くのは初めてでつい先日、契約を更新したばかりだった。工場からは「新型コロナウイルスの影響で仕事は減っているけれど、給料は出せると思う」と言われていた。

 仕事は機械の部品加工の一工程を担い、作業服がオイルで汚れることもしばしばだが「接客の煩わしさがなくて、製造業が自分に向いていると思った。居心地のいい職場で、ずっといられると思ったのに…」とショックを受けている。

 派遣元が6月分の休業手当を払ってくれるが、収入は激減。7月以降はどうなるか分からないという。小学生の子どもが3人いる。

 「食べるだけなら、夫の給料でやっていけるかもしれないけれど。家のローンや子どもの習い事もある」。貯金は子どもの将来のためなので、手を付けたくない。親の援助は期待できない。出費をどう切り詰めるか頭を悩ませる。

 次の勤め先は、派遣元も探してくれている。希望は製造業。子どもがいるため残業は難しく、急に休ませてもらえるような職場を望んでおり、すぐには見つからないかもしれない。

 福井市内の派遣会社幹部は、2月までの人手不足が一変したと語る。4、5月は「県内の製造業で3、4割の派遣労働者が切られたようだ。さらに7~9月分の契約更新で、雇い止めとなるケースも出てくる」とみる。裏書きするように、全国では政府が緊急事態宣言を発令した4月から、企業などの休業に伴い職を失う人が急増。派遣社員の大量の雇い止めが表面化する「5月危機」の懸念が現実になりつつある。

 4月の県内の新規求人数(原数値)は前年同月比19・3%減と、リーマンショック後の2009年7月(22・5%減)以来の落ち込みとなった。新規求人数は景気の先行指数といわれる。ハローワーク福井の新規求人数は25・6%減と県内で最も下がった。担当者は「5月の数字は、さらに厳しくなる」と話す。

 新規高卒予定者の求人受け付けが今月始まった。担当者は「(企業の業績回復は)緊急事態宣言など経済活動への抑制が外れても、外国の状況次第というところもある。企業がどれだけ踏ん張れるか。注意深く見ていかないと」。データが語る先行きは、ひたすら暗い。

 派遣切りに遭った由希さんは「正直、派遣を続けるのは怖い。できれば正社員への登用があるか、長く続けられるところがあれば…」と願う。国は緊急経済対策の一環で、国民全員に一律10万円を支給する。「家族みんなでどこかに行きたいと思っていた。でも、生活費に充てなきゃだめだね」と、力なく笑った。

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