【論説】福井弁護士会は、情報の適切な判断や発信の必要性を学ぶ小中学生向けの動画をホームページ(HP)で発信している。新型コロナウイルスの感染拡大時、県内でもインターネットでデマや誹謗(ひぼう)中傷が相次いだ。一方で自由に意見を述べることは民主主義の根幹だ。法律の専門家による教育動画を通して、表現の自由と人権を守る大切さを考えてほしい。

 動画は福井弁護士会が「ジュニアロースクール」で子どもたちに教えた様子を撮影し公開した。スクールは、法的な価値観や論理的な思考力を養ってもらおうと開き、例年大勢が参加する催しだ。学びを深める構成も練られており、県外の弁護士も視察に訪れるという。

 弁護士が「裸の王様」や「王様の耳はロバの耳」などなじみの物語を劇にして披露し、子どもたちがグループに分かれて話し合う。表現の自由を守りつつプライバシーに配慮する必要があることなどを学ぶ。

 動画には劇や参加した小中学生の発表の様子がまとめられている。自宅で取り組む際はHPからワークシートをダウンロードし、自分の意見を記入。シートには他の人の意見を聞く項目もあり、さまざまな考えに触れることができる。

 新型コロナが感染拡大したとき、県内でも医療従事者らへの誹謗中傷が社会問題化した。また、全国的にはテレビ番組に出演し会員制交流サイト(SNS)で中傷を受けた女性が亡くなったことも大きな問題だ。国はネット上の匿名投稿への対応を検討している。

 そんな中、動画が公開されたことは、情報発信を考えるいい機会になる。広くみんなに伝える情報と、逆に、人に伝えるべきではない情報について思考を巡らせたり、真偽を確かめずに気軽に発信する情報が社会問題化する危険性も把握したりしたい。

 教科書でも子どもたちは人権や表現の自由を勉強している。ただ、今回は劇やワークショップを加えることで、より体感的な理解につながるだろう。何より、小中学生のうちから表現の自由や個人のプライバシーに対する法感覚を身につける意義は大きい。細かい知識は時間がたつと忘れてしまうかもしれないが、根底に法があることを知っていれば、異なる対応も可能だろう。

 SNSはだれもが情報発信できる点で、人々が身近な社会問題に目を向け政治への関心を高めることにつながる。一方で誤った情報を発信したり、誹謗中傷したりすることは許されない。新型コロナの第2波が懸念される中、ネットによる情報発信のメリットとデメリットを考えながら親子で動画を見ることを勧めたい。

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