羽二重餅の詰め合わせを販売している新珠製菓の直売店=福井県越前市村国3丁目

 新型コロナウイルスの影響で観光など県境をまたぐ往来が減り、土産品が売れない状況が続いている。福井県を代表する銘菓「羽二重餅」も例外ではなく、事業者は行き場のない商品を大幅値下げして県民に販売している。厳しい状況の中、「県民に食べてもらうきっかけにしたい」と商品開発を進める動きも出ている。

 福井県立恐竜博物館や道の駅などへ卸している新珠製菓(越前市)は例年、3月から工場をフル稼働させ、春休みや大型連休に備える。今年は製造量を平年の約3割に抑えたが、それでも大量の商品が残った。

 賞味期限は迫り「捨てるのはしのびないが、出荷できる見込みもない」(面和良営業部長)。同社は5月上旬から、賞味期限が迫ったものを無料にし、期限が2~3週間ほどの商品は定価の半額から3分の1に当たる300円とした。よりお得な詰め合わせも用意している。

 情報は口コミや会員制交流サイト(SNS)で広がり、越前市内の直売店には市内外から多くの人が訪れている。購入者からSNSで感謝の言葉も届き、面部長は「たくさんの方に来てもらい、捨てるしかない商品を救ってもらった。逆に感謝を申し上げたい。県民に食べていただく機会にもなった」とほほ笑む。在庫は少なくなく、当面値下げを続ける方針。

 一方、工場、店舗自体が観光名所となり、年間20万人以上が訪れるマエダセイカ(福井市)は、観光客が減って時間に余裕が出たことから商品開発を再開した。同社は2015年、事業停止した「笹屋菓舗」(越前市)から「羽二重巻」の商標権などを買い取ったが、日々の業務に追われ、商品化に至っていなかった。

 現在、羽二重巻のパッケージデザインなどを最終調整中で、7月の販売を目指している。前田晃宏社長は「贈り物の役割が定着し、福井の人に日常的に食べてもらえないのが課題だった。水ようかんやソースカツ丼のように、県民が親しみ、末永く食べられる菓子にしていきたい」と、思いを語った。

■羽二重餅 蒸したもち粉に砂糖や水あめを練り込んだ餅菓子で、明治中期に作り始められたとされる。名前は絹織物「羽二重」の産地に由来し、なめらかな食感と光沢感が特徴。

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