【越山若水】「デュシェンヌ・スマイル」という言葉がある。フランスの神経学者にちなんだ名称で、日本語で「本物の笑顔」と呼ばれる。意図的な作り笑顔とは違い、自然に湧き出る表情のこと▼作り笑いでは目が笑っていないが、本物の笑顔だと口角や頬が上がり目尻にしわができる。米国の大学が卒業アルバムに写る女性のデュシェンヌ・スマイル度を得点化して追跡調査した結果、点数が高い人ほどその後の人生で生活の満足度や幸福感が高かったという▼身体的な特徴や魅力は調整済みだ。その上で本物の笑顔が作れる人ほど、良好な人間関係を築いたり、周囲に合わせたりするのがうまい。だから心理的に安定し、立ち直るのも早い。それが幸福を引き寄せると分析する(「実践 幸福学」友原章典著、NHK出版)▼つまり、心からのスマイルは自らに幸せを呼び込む切り札であり、さらに周囲の人も幸せにする可能性さえ秘めている。それは何も西洋の研究に限らず、仏教にも伝わる教えである。「和顔愛語」。和やかな笑顔と思いやりある言葉で人と接しなさい―と説いている▼坂井市の日本一短い手紙一筆啓上賞。今年のテーマは「笑顔」に決まった。世界中を巻き込んだ新型コロナウイルスで、うちひしがれた心を元気づけるには笑顔が一番のクスリ。「本物の笑顔」でどんな幸せが導かれたのか、今から楽しみである。

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