ああ、やっぱりこの方は天才なんだ──。一曲一曲が、宝箱をひっくり返したみたいに多様な表情で、キラキラと輝いている。色褪せることないメロディに、深みを増した歌声。シンガーソングライター・宮沢和史が歩んできた30年、決して平坦ではないその道の先に開けた奇跡のような時間が、ぎっしりと詰まっている。

 2019年10月、大阪フェスティバルホールにて開催されたデビュー30周年記念コンサートの模様をベースに、本人やライブメンバーへのインタビューを交えながら構成された本作。たんなるライブ映像にとどまらず、音楽ドキュメンタリー番組のような情報の広がりもあり、宮沢の今の思いをしみじみと受け取れる贅沢な作品となっている。……とはいえ、やっぱりライブで歌う姿、ゲストミュージシャンたちとのやりとりでふと見せる笑顔が最高。さまざまな困難も乗り越え、ここに戻ってきてくれてありがとう。ふとそうつぶやきたくなる、不思議なあたたかさに満ちた快作だ。

(よしもとミュージック・4500円+税)=玉木美企子

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