90年代にかなりハスキーな歌声で人気を集めたロック・ボーカリストの30周年オールタイム・ベスト。CDは自ら楽曲をセレクトし、初回盤は150分超の映像集(熱唱シーン多め!)と本人解説入りのブックレット付と至れり尽くせりだ。

 “Passionately”と名付けられたCDのDisc1は、衝動的な楽曲が多い。「何かを失っても ほしいもの」と切望する『自分自身の証明』や、「戦いを知るために生まれたんじゃない」と叫ぶ『罪』など、彼女のかすれた声だからこそ主人公の渇望がリアルに響く。特に、閉塞感の中で未来を切り拓けと男言葉で歌う『VOICE〜明日への滑走路』は胸に迫る。

 それでいて全体が重苦しくならないのは、高見沢俊彦らしい勇敢な曲調の『希望の鐘』と『独立戦争』、そしてカバー曲の『あの素晴しい愛をもう一度』など、自作以外の曲があるからだろう。

 Disc2の“Softly&Gently”では、上田知華作詞・作曲の4曲がメロディアスで全体を穏やかに包む。その中で、こちらも自作の4曲が強く印象に残る。泥だらけでも自分らしく生きる『この道の上』、初心を想い出してと励ます『少年』、さらには希望を見つけづらくても、決して絶望はしないと歌う2010年の『光』、など、どれも闘い続ける人に寄り添った歌唱が愛おしい。ラストの『たった一度の物語』で、未来を見つめながら幕を閉じるような構成も上手い。まだまだ人生は続くのだ。

 本作を聴けば、人は意外と孤独じゃないことを教えられるはず。

(ビクター・2CD+DVD+BOOK 初回限定盤 6000円+税)=臼井孝

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