車いす陸上の高田稔浩選手

 新型コロナウイルス感染症の猛威は、競技大会を延期や中止に追いやってしまい、社会も一変させ、多くの大切なものを失わせてしまいました。

 スポーツを前に、障害という挫折を経験していた私は、挑戦するよりも現状維持に幸せを感じるようになり、できない理由を無意識のうちに探し出していました。

 そんな中、不自由なくスポーツをしている仲間たちを目の当たりにして、私は変わりました。バリアー(障壁)が、私の心の中にあることを知ったのです。それからは、どうやったらできるかを考えるようになり、失敗もいとわないようになりました。とにかく、できるところからやってみる。仲間が、挑戦する勇気を与えてくれたのです。

⇒中高生へあなたもメッセージを送りませんか

 アテネパラリンピック出場を控えていた2004年7月、長時間の豪雨による足羽川の堤防決壊という、大水害に福井市が見舞われ、市職員の私は練習どころではない事態に陥りました。これから! という時期に、気持ちをどう持っていって良いのか分からなくなり、コーチにぶつけてみました。「逃げるのでも壊すのでもなく、置かれた環境で、どこまでできるかが試されている!」と、コーチに諭されました。

 霧が一気に晴れたように感じられ、それからは濃厚で集中した時間の過ごし方ができるようになりました。あの時は、災害復興が進むにつれ先が見えてきましたので、仕事に復興に練習に頑張ることができました。

 今回、社会全体が自粛ムードの中でも、監督・コーチと相談し、できるところからやってみて、やってみたことを仲間と共有してみてください。お互いに勇気が出てくると思います。

 置かれた環境で試されているのは、きっとライバルたちも同じです。いざこの事態が明けた時、どれだけ強くなっているか? みんなの粘り強さ、タフさが問われる勝負になるでしょう。だから、できることをより多く見つけ、焦らず慌てず諦めず、その日に備えてください。

⇒【前を向こう】中高生にアスリートからエール

 ■たかだ・としひろ 福井工業大学大学院卒。福井市役所勤務。生まれつきの難病で次第に足先から動かなくなる。30歳で車いす陸上を始め、2004年パラリンピックアテネ大会で三つの金メダル。続く北京、ロンドン大会でも活躍した。18年福井しあわせ元気大会にも出場。54歳。

  ×  ×  ×

 新型コロナウイルスの感染拡大で、スポーツ大会が相次いで中止に追い込まれた。汗と涙をぬぐって頑張ってきた成果をどこにぶつければいいのか、と悩む中高生のみんなを勇気づけたいと、福井出身の選手たちが自らの体験を踏まえたエールを寄せた。

 福井出身の選手たちが福井県の中高生アスリートにエールを送る「前を向こう」。福井新聞は「前を向こう」で紹介した選手への激励メッセージを募集します。選手たちに皆さんから激励メッセージを送りませんか?選手に届けます。 →メッセージ投稿はこちらから

関連記事