Zoomを通して、コロナ禍の美術館のあり方について語る福井県福井市美術館の石堂裕昭館長(左)と福井県立美術館の野田訓生副館長

 「作品を展示して照明も当てたのに、展覧会を開けない。見ていただいて初めて美術館は存在できるのだという当たり前のことをあらためて痛感した」。新型コロナウイルスによる臨時休館から再開した福井県内3美術館の学芸員が5月17日夜、ビデオ会議システム「Zoom」によるオンラインのトークイベントに出演。未曽有の事態への対応や動画配信の可能性、コロナ後の美術館の在り方などを語り合った。

 ■動画の可能性

 アート愛好者でつくる「福井まちなかアート探検」と福井県立美術館喫茶室「ニホ」、カウベル・コーポレーションが共催。県立美術館の野田訓生副館長と福井市美術館の石堂裕昭館長、金津創作の森美術館の千葉由美学芸員をゲストに招いた。

 3館を巡っては、4月から始まる予定だった仏ランス美術館の絵画を並べる「風景画のはじまり展」(県立美術館)、「木梨憲武展」(福井市美術館)、「小松宏誠展」(創作の森美術館)が中止に。11、12日から再開し収蔵品展や常設展を開いているが、先行きは不透明な部分もある。

 そんな中、3館をはじめ全国の美術館が進めているのが動画配信だ。県立美術館は、4月時点で開催が不透明だった新収蔵品展を紹介する動画を収録。学芸員が出演し、アップを多用した高精細の映像で作品自体の魅力を伝えた。

 福井市美術館の石堂館長は、動画で満足して実物を見なくなる危険性を指摘しつつも「ギャラリートークを配信して、予習してもらってから会場へ足を運んでもらうやり方もある」と、鑑賞体験を補う動画の可能性に言及。千葉学芸員は「創作の森らしさを確立した上で発信しないと意味がない」と、各館が一斉に配信する中で個性の打ち出しが鍵になるとした。

 ■独自性に立ち返る

 仏ランス美術館からの作品輸送が頓挫した県立美術館のように、今年は全国的に海外の作品展は難しくなる見込み。野田副館長は「各美術館とも自館の独自性が何なのかというところに立ち返っていくのでは」と、コレクション展が増えていくとの観測を示した。

 また、3密がNGとなる中で大量集客が期待される企画展では、予約制が広まっていく可能性も示唆。収支の問題はありつつも、入館時間をコントロールすることで「鑑賞の質が上がるのではないか」とした。

 ■美術館ができること

 目に見えない、測れない心の豊かさを育む芸術を扱う美術館が、コロナ禍でできることは。「人々が抑圧から解放され、押し寄せる終息後をしっかり見据えて準備すること」と語るのは石堂館長。「多くの作家がコロナ禍をどう作品に生かすかを考えている。そういう人たちと何ができるかだ」とし、展覧会を軸に作品や作家の思いを伝えるという学芸員の基本は変わらないとした。

 千葉学芸員は「世界は大きく変わる。美術もいろんな分野と関わりながら、既存の境界線を軽々と越えていくのでは」と期待した。

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