【論説】春に続き、夏も球児のはつらつとしたプレーを甲子園で見ることができなくなってしまった。新型コロナウイルス感染症の影響で、全国高校野球選手権と代表49校を決める地方大会の中止が決まった。憧れの大舞台を目指し、切磋琢磨(せっさたくま)してきた球児の、特に最後の夏となる3年生の無念さは想像を絶する。

 高校球界では3月の選抜大会に続き、全国9地区の春季大会と47都道府県全ての春季地方大会が中止になった。野球以外でも先月には、全国高校総合体育大会(インターハイ)の史上初の中止が決まった。

 感染が拡大していた春ごろと、一定の収束傾向にある現在とでは環境は異なる。とはいえ、緊急事態宣言が継続中の地域や学校再開のめどが立っていないところもある。6月1日に県立学校を再開する福井県も、部活動は当面トレーニングが中心だ。5月7日に再開した青森県ですら、部活動は2時間程度の健康観察という位置づけで、対外試合は禁止である。

 試合に備えた体力を高校生が回復するには1カ月以上かかるといわれる。対外試合で試合勘を取り戻す時間も確保しなければ、けがにつながる。しかし、練習再開の状況が各地でまちまちのうえ、大会が開かれるとなると、今後再開する地域は、より急ごしらえでチームを仕上げなくてはならない。これでは、最優先に考えるべき球児の安全を担保できているとはいえないだろう。

 大会運営にも課題を残していた。全国選手権となれば甲子園への長距離移動を必要とする代表校が大半だ。消毒作業をはじめとする球場・宿泊施設の感染防止対策も完全に不安を払拭(ふっしょく)できる方法があるわけではない。感染者を出せば医療従事者への負担を増やしてしまう。環境面も整わない以上、中止という判断はやむを得ないだろう。

 気がかりなのは、球児のメンタル面への影響である。16カ国・地域のプロサッカー選手を対象にした調査によると、新型コロナによる活動休止の影響でうつ症状を示す選手が急増しているという。より精神面が未熟な高校球児であれば影響はなおさらだ。甲子園という目標がうせても積み重ねてきた努力は色あせない。不断の取り組みを誇りに思えるようなサポートを指導者には求めたい。

 甲子園につながらなくとも、地方独自の大会を開催する動きがあるという。聖地での戦いと比較することは難しいが、高校生活の多くの時間を割いてきた仲間とともに力を発揮する場となろう。地域内であれば感染防止策も行き届く可能性は高い。少しでも多くの地方で球音が響くことを期待している。

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