南北に走る片町のメイン通り。多くの看板の電気が消え、人通りはほとんどなかった=5月19日午後9時20分ごろ、福井県福井市順化1丁目

 福井県福井市の繁華街・通称「片町」の灯が戻らない。新型コロナウイルスの影響による県内の外出自粛要請や休業要請が解除された中、利用自粛要請が続くスナックやラウンジなどを中心に多くの飲食店が営業再開に踏み切れずにいる。第1波でのクラスター(感染者集団)発生もあり、経営者の一人は「片町全体が敬遠されていて客足が戻る気がしない」とうなだれる。地道な感染防止対策の準備は進むが、影響の長期化を懸念する声も出ている。

 ■再開は「1~2割」

 平日夜間の外出自粛が解除されて2日目の5月19日午後9時。片町のメイン通りの南端に立つと、約400メートル先の北端までがすっきり見渡せた。看板の電気は多くが消え、人通りはほとんどなく静かだ。路地に入れば、1台も止まっていないコイン駐車場も目立つ。

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 営業中のある居酒屋は「3密回避中 助けてください」と大きな看板を立てていた。スナックやバーでは、前倒しする以前に県が出していた休業要請の期間に合わせてか「5月20日まで休業します」との貼り紙も複数見られるが、再開時期を示していない店舗がほとんどだ。

 片町青年会の会長を務める男性(42)は、3月にラウンジで複数の感染者が確認されたことで「県内のコロナは片町から始まったようにみられていて、また広がらないように経営者みんなが警戒している」と話す。

 「営業再開した店は1~2割じゃないかな」。早々と店を閉めようとしていた居酒屋経営の60代女性は、「タクシー、花屋、たばこ屋…。飲み屋が閉まっていると連鎖でみんな経営が苦しくなる」とつぶやいた。

 ■「来て」とも言えず

 片町のあるクラブは3月末から営業を自粛。常連客の団体から臨時開店を頼み込まれても、ママの30代女性は「この店から(感染流行の)第2波の先陣を切りたくない」と断ってきた。利用自粛の期間を終えた6月1日の再開を考えているが「感染が心配な中で本当に店を開けていいのかどうか。お客さんに『来て』とも言いづらい」と漏らす。

 スナック経営の60代女性は営業再開に向け、「密」を避けるための人数制限やカラオケのマイク消毒などの対策を準備中だ。ただ、「外出自粛が解除になったからと言って、お客さんは慎重だから元通りに飲み歩いたりはしない」と考え、再開日を決めあぐねている。「元に戻るには、きっと今年いっぱいはかかる。今まで味わったことのない危機感が片町全体に広がっている」と感じている。

 ■最後までダメージ

 食事メインの飲食店も再開に二の足を踏む。接待でも利用される和食店は「片町自体にお客がいないから」と、5月末までは営業自粛を続ける構えだ。店員は、人件費などを考慮した上で「通常営業をやめてテークアウトにしている方がまだまし」と打ち明けた。

 「コロナを機に飲み会のあり方も変わるんじゃないか」と心配するのは、片町商店街振興組合の理事長(60)。「家でオンライン飲み会を楽しんでいるという話もよく聞く。会社の飲み会だって、今までは先輩に誘われたら必ず行っていただろうが、これからはそうじゃなくなるかもしれない」と不安げだ。

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 あるママは、売り上げが立たない中で家賃など固定費の資金繰りに思案を巡らせつつ、嘆いた。「新型コロナのせいで最初にダメージを受けたのが片町で、最後までダメージが続くのも片町になりそう」

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