【越山若水】新型コロナの感染拡大防止のため県内の事業者に出されていた休業要請が解除され、緊張感が幾分和らいだ。だが出口が見えない中での第2波へのおびえ、経済的なダメージによる心労は拭いきれない▼そんな中で五木寛之さんのエッセー「大河の一滴」(幻冬舎)が再び読まれているとか。1998年に発刊され、累計では300万部を超すようだ。発刊当時はバブル経済崩壊後の金融破綻の真っただ中だった。拓銀、政府系の長銀、日債銀に山一証券など日本を代表する金融機関が倒産している▼このため厳しい就職難に陥り、当時の大学生らは就職氷河期世代と呼ばれた。今日もなお尾を引き、県内には氷河期世代で非正規社員や無職者が4千人もいるらしい。この世代に絞っての職員採用試験を福井県が実施する。一筋の光明となろう▼「大河の一滴」で、五木さんは人生で思いがけない不幸に見舞われた際などに「心が萎(な)える」という状態が必ずあるものだという。そうした時には「『人が生きるということは苦しみの連続なのだ』と覚悟するところから出直す必要があるのではないか」「『人はみな大河の一滴』ふたたびそこからはじめるしかないと思うのだ」と説いている▼自身の体験からたどりついた五木さんの究極の人生哲学だろう。バブル崩壊後の金融危機と新型コロナ。時代を超えて共感を得ているようだ。

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