【越山若水】則武三雄(かずお)さんの詩作「偽詩人」の一節。「生涯を夢みつづけ 私は在る 自分の才能の限界を知らず 天上の星にたえず思いをはせながら」。妻、花枝さんの則武評「物欲も名誉欲もなく、夢ばかり食べて生きていた人」(「20世紀ふくい群像」福井新聞社)と重なり、則武さんの人柄がうかがえる▼鳥取県米子市生まれで文学の師と仰ぐ三好達治の招きで来県している。自宅に文学拠点の北荘文庫を創設すると、若い詩人が集い則武学校と呼ばれ慕われた。門弟ともいえる荒川洋治さんが、則武さんの筆力について語るエッセーを東京新聞に寄稿している▼大手新聞地方版の文化欄で則武さんが地域同人誌の短評を担当していた。100文字程度だった短評は簡潔で要を得て温かく文体(しらべ)があり、中学生のころに愛読していた荒川さんは尋常な人ではないと感じていたという。短評末尾の筆者サイン「一雄」が、則武さんの本名だと知るのは後々のことだったようだ▼同じく門弟の川上明日夫さんによれば、荒川さんは詩もこう評しているらしい。「削(そ)いで削いで削ぎまくって、骨だけでできているような詩である。その骨は、すれ違う時に、鳴る骨音が抒(じょ)情じゃないか」▼今年は則武さんの没後30年。県ふるさと文学館では企画展が開かれている。福井の文学界に貢献した則武さんの人柄、作品の魅力をかみしめたい。

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