WBCヘビー級王座戦で、デオンテイ・ワイルダー(左)からダウンを奪うタイソン・フューリー=ラスベガス(ロイター=共同)

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、世界ボクシング界のトップシーンも止まったままだ。

 しかし、来るべきリング再開の時期へ向け、闘志を温めている王者たちがいる。その代表的な一人が世界ボクシング評議会(WBC)ヘビー級の新王者タイソン・フューリー(英国)だろう。

 前王者デオンテイ・ワイルダー(米国)との第3戦、さらに主要4団体統一戦となる同じ英国人アンソニー・ジョシュアとの決戦も予想される。果たして大きな期待にフューリーはどう応えるのだろうか。

 フューリーは1988年8月12日、マンチェスターで未熟児として生まれた。

 ボクシング好きの父親が怪物マイク・タイソン(米国)にあやかり、「強く元気に育ってほしい」とタイソン・ルーク・フューリーと名付けた。

 アマチユアとして五輪出場を夢見たがかなわず、プロ転向を決意。2008年12月、初回KO勝ちでデビューを飾った。

 順調に実績を重ね、15年11月、最強ウラジーミル・クリチコ(ウクライナ)を判定で破り、世界の3団体ヘビー級王座を獲得した。

 しかし、思わぬ試練が待っていた。王者という重圧に苦しみ、我を忘れていく。「夢の中に悪魔が出てくる」という状態にまで追い込まれた。

 酒を飲み、コカインに手を出す。揚げ句の果てには自殺願望を抱くなど、世界戦線から脱落した。「フューリーはもう終わった」。無冠の男に対する周囲の視線は厳しく、ライセンスも停止された。引退は確実かと思われた。

 だが、ここで踏ん張った。家族のためにもリングに戻るしかない。

 18年1月、ライセンスの資格停止処分が解除され、同年12月、ワイルダーに挑戦。惜しくも引き分けたが、存在感は示した。

 そして今年2月の再戦で、見事7回TKO勝ちし頂点に戻ってきた。

 試合内容も文句なし。ワイルダーの強打をことごとく外し、的確なコンビネーションを浴びせた。本人が「王が帰還した」と表現したほど。その底力には驚かされた。

 そして第3戦の契約が成立し、当初は年内開催が有力視されていた。

 しかし、新型コロナウイルスの感染が拡大。プロモーターのボブ・アラム氏は「現在の状況を考えると来年まで延期もある」と米メディアに語っている。

 主役の座を手にするためには、ジョシュアとの対決も避けられそうにない。復活したフューリーの闘いは注目の的だ。(津江章二)

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