【越山若水】司馬遼太郎の代表作に「坂の上の雲」がある。伊予(愛媛県)松山出身の軍人秋山好古(よしふる)、真之(さねゆき)兄弟と真之の親友、俳人正岡子規が主人公。友情と情熱、成長を通し、はつらつとした明治期を描いた長編ロマンだ▼3人は順次、上京する。好古は陸軍士官学校。後を追い子規と真之は中学を中退し、そろって大学予備門(東大の予備教育機関)に合格し1884(明治17)年9月に入学。真之は海軍兵学校に転じて、子規は90(同23)年9月に帝国大(後の東京帝大)に入学する▼大学の入学時期は9月のようだが、「大学の制度は、しばしばかわった」と司馬は東大を例に、変遷ぶりをわざわざ説明している。明治期が近代国家の黎明(れいめい)期だった証しだろう▼今日のコロナ禍。感染拡大で長期化する学校休校を踏まえ9月入学が急浮上している。安倍晋三首相も「前広に様々(さまざま)な選択肢を検討したい」と、論点や課題を整理し6月上旬にも導入の可否について方向性を示すという。ただ政府内には導入があっても来年9月からと慎重論があるようだ▼導入賛成派は「オンライン授業など環境面で公平性が保てない」といった理由が主流。反対の意見には「国、自治体の会計年度とのずれなど混乱を招く」などが挙がる。コロナ禍が契機ではあるが、脱コロナ社会を見据えた、令和の成熟した時代にふさわしい選択、決断であってほしい。

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