亡くなった男性の家族や職場の仲間たちが折ってくれた千羽鶴を持つ妻。中央の写真は病床の男性の枕元に飾られていた=福井県越前市内

 新型コロナウイルスに感染し、亡くなった人は福井県内で8人に上る。そのうちの一人で、約1カ月の闘病の末に亡くなった県内12例目の会社役員男性(57)=越前市=の妻(57)がこのほど、福井新聞の取材に応じた。「ウイルスが憎くて悔しい」とやりきれない思いを吐露。夫の会社の社員や友人、医療従事者の献身的な支えに深く感謝し「奇跡を信じて、ワンチームで闘い続けてきた。当たり前の日常のありがたさが身に染みた1カ月だった」と振り返った。

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 3月28日に夫の陽性が判明した。自分は濃厚接触者になり、2週間の自宅待機となった。夫が最初に熱を出した22日はコロナだと思わなかった。でも入院後、医師からこれから悪化する可能性があると聞いた。30日に集中治療室(ICU)に入り、人工呼吸器を挿管。4月1日には人工心肺装置「ECMO(エクモ)」を装着した。病院に行けなかったから、家族の同意は全て電話越しだった。

 私の自宅待機が解け4月16日、入院先の病院へ行った。コロナ患者なので入室はできず、壁にはめ込まれたガラス越しの夫は、たくさんの管がつながれていた。布団からのぞく手はむくみ、指輪は外されていた。涙が止まらず、言葉が出なかった。現実を受け入れられず「ここで何しているの?」と思った。

 真上から撮影されたモニター画面の夫の顔を別室で見た。きれいな顔だった。看護師が毎日ひげをそり、眉もきれいに整えてくれていた。体が硬直するからとマッサージをし、お湯で体をふいてくれた。涙が出るほどありがたかった。

 病院には夫の会社の社員や友人が折ってくれた千羽鶴を持参した。看護師が写真を撮って、引き延ばして、枕元に置いてくれた。

 当初は世間の反応が少し怖かったが、知り合いは毎日、病院の駐車場に行き、病室に向かって祈ってくれた。励ましのメールも、返しきれないほどもらった。夫は奇跡を起こしてくれるかもしれないと思った。

 4月26日正午に病院に呼ばれた。医師から「いろいろな数値が桁外れで、一両日中に亡くなる方の数値です」と言われた。わずかな希望を持ち続けてきたけれど、現実が目の前に現れたようだった。

 その日のうちに夫の容体は悪化し、脈が乱れ始めた。看護師は、見やすい位置にベッドを動かしてくれた。「(意識はなくても)聞こえているから、話し掛けて」と言われた。空間を遮るビニール越しに、娘と一緒に「早く帰ってきて」「みんな応援してくれてるよ」と叫び続けた。看護師たちも後ろで泣いていた。

 医師から最期を告げられるまで30分ほど叫んでいたと思う。26日午後3時42分、夫は亡くなった。

 帰宅の途中に立ち寄った夫の会社では、社員が外で待っていてくれた。骨壺(こつつぼ)を抱えながら、会社の中や倉庫や敷地をぐるっと回った。夫は30歳で独立、努力家で仕事第一の人だった。

 1カ月で夫の命が奪われた。夫は無念だったと思う。でも多くの人が寄り添い、支えてくれた。ワンチームで闘い抜いてくれた人たちには感謝の言葉しかない。

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