【論説】鯖江・丹生消防組合鯖江消防団、越前消防団に4月、経験豊富なOB団員がそれぞれ17人ずつ加入した。これまでに現場で培った消火や水防の技術を後進に継承してもらう狙いだ。年代は50歳代が中心で、まだまだ活躍できる。頼れる先輩として、地域の消防力強化に貢献してもらいたい。

 同組合管内(鯖江市、越前町)の火災件数は2018年に12件となり、組合発足以来最少を記録した。火災が減るのはもちろん良いことだ。ただ一方で、現場での経験が少ない若手消防団員が増え、消火技術などの低下という課題が出てきた。

 消火活動は「ただ水をかければいいというものではない」と同組合職員は解説する。例えば建物によって水をかけにくい箇所があり、効果的に放水するにはこつが必要だという。ポンプ車を使う場合もポンプの放水圧力の加減など、現場に応じた運用が求められるそうだ。こうしたノウハウは経験から学ばないと、なかなか身に付かない。

 そこで場数を踏んだOB団員の力を借り、若手に技術を継承してもらうことにした。各分団からの推薦をもとに両消防団で計34人を任命した。かつて分団長などを務めたベテランぞろいで、経験値の高さは申し分ない。

 具体的な活動としては火災発生時に現場に出動し、消火に当たる団員に対して助言や補助をしてもらう。水災でも土のうの作り方、積み方などの指導が期待される。

 全国的に消防団員は減っている。1956年に約183万人いたのが、2019年は約83万人と半数以下になった。仕事を抱えながらの活動は大変なことから、敬遠する若者が多いようだ。鯖江、越前消防団も現在の団員数は条例定数に足りていない。

 だが、災害現場で消防団員の活躍は不可欠だ。同組合職員は「大規模火災の消火は、放水するホースの筒先がとにかくたくさん必要だ。水災では土のうを千個、2千個作らないといけないこともある」と話す。こうした人海戦術は消防職員だけでは到底、追いつかない。危険が伴う現場で、勇気を持って活動する消防団員が支えている。

 OBの加入は団員増になるし、技術の継承によって若手の育成にもなる。消防団が質量ともにパワーアップすることは、地域の安心安全につながっていく。県内の消防組合や消防本部で消防団にOBを採用するのは3カ所目という。今後さらに広がっていくことを期待したい。

関連記事