【越山若水】「ウイルスの次にやってくるもの。もしかしたら、ウイルスより恐ろしいもの」―。そんなせりふで始まる日本赤十字社が制作した絵本アニメーションの動画が公開され、話題になっている▼それは、心の中にひそんでいて手を洗っても流れていかない。暗いニュースや間違った情報を食べてどんどん育ち、人を傷つけ始める。「ウイルスが広がったのはあいつのせいだ」と思わせるようになる。絵本はその正体を、新型コロナの感染拡大から生じる「恐怖」として描いている▼「恐怖」は、じわじわと社会もむしばむ。緊急事態宣言下で過度に自粛を求める行為が「自粛警察」と呼ばれ、波紋を広げている。営業している飲食店や駐車場にある他県ナンバーの車に非難する文面の紙を貼りつける。地域のルールに沿った営業にもかかわらず、まるで自分こそが「正義」といわんばかりに匿名で攻撃する。そうした行為こそ「恐怖」にほかならない▼日赤の絵本は「非難や差別の根っこに自分の過剰な防衛本能がある」とし、冷静に客観的に恐怖を知り、見つめれば恐怖は薄れると語っている▼他人と違ったことを認めない同調圧力が強まり、相互監視型の息の詰まる社会にはしたくない。日赤の絵本は、恐怖には苦手があるという。「笑顔と日常」である。きちんと食べて笑い合い、ぐっすりと眠る生活で、恐怖を追い出したい。

関連記事