【論説】大野市のギャラリー「COCONO(ココノ)アートプレイス」が今春、オープン3年目を迎えた。約70年前、無名の若手作家の芸術活動を支えた「小コレクター運動」で市民が購入した絵画を借り受け、築130年以上の古民家を改修した施設に展示している。市内で活発に進められた運動の財産を次代につなげる今後の取り組みに期待したい。

 「小コレクター運動」は1950年代に国内美術教育界で起きた「創造美育運動」に深く起因する。美術評論家、久保貞次郎が提唱した「美術を通して子どもの想像力を健全に育てる」という動きが全国に拡大。本県は特に活発に取り組み、その中心人物の一人が大野市の美術教師だった。

 今でこそ大野ゆかりの作家として知られる靉嘔(あいおう)やキムラリサブロー、池田満寿夫だが、運動が始まった当時は無名の若手作家。不遇の彼らの作品を購入し芸術活動を支えたのは、多くが美術品の所有とは縁遠い一般市民。取っつきにくい抽象画を多く買い求めるなど、新しいことを取り入れる進取の気性に驚く。

 コレクター運動で手に入れた作品が市内の一般家庭に何げなく飾られていることも多いと聞く。300点ともいわれる市民が所有する貴重な財産を紹介、運動の背景を発信しようと2018年3月に「COCONO」がオープンした。展示スペース「ハナレ」「オモヤ」に市民から無償で借り受けた作品を並べ、年数回入れ替えるなど、来館者の楽しみの幅を広げている。ほかに地元作家の工芸作品なども紹介している。

 施設に利用した古民家は1902年ごろに建てられ、県認定の「ふくいの伝統的民家」。白壁を基調に太い柱や梁(はり)を生かした作りは重厚感があふれ、歴史や趣のある施設とアートのマッチングが面白い。

 「COCONO」の2019年度の観覧者は約5600人。日本美術史に名を残した芸術家の作品が間近に見られることを考えると、少し物足りなさを感じる関係者もいる。しかし、作品やコレクター運動の背景の解説、作家を招いた講演会を行うなど、満足度という視点でみると、合格点を付ける鑑賞者は少なくないのではないか。

 新型コロナウイルスの影響を受け現在は休館中。企画していた展示会が中止となり残念だが、今後の企画を楽しみにしている美術ファンも多いだろう。コレクション運動当時を知る市民が少なくなる中、先人の取り組みを次代に発信し続けることを望みたい。

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