【論説】新型コロナウイルスの感染が続く中、医療従事者やその家族、感染者らに対する偏見や差別が後を絶たない。不当な差別はさらなる感染の拡大につながる恐れもある。同調せず、関係者にねぎらいの思いをこそ届けたい。

 政府の感染症対策専門家会議は先月、医療機関や高齢者施設で大規模感染が発生し、医療従事者のみならず家族に対しても差別が広がり、子どもの通園・通学を拒まれるケースまで起きていると報告した。

 福井県医師会も会見を開き、医療従事者が周りの人から「近寄らないで」と避けられたり、家族からも「帰ってこないで」と言われたりした事例を挙げ、風評被害の深刻化を訴えた。

 こうした風潮が広がると医療従事者らのモチベーションが低下。休職や離職を促しかねない。県内では看護師の家族が職場で出勤を拒まれ、感染症病床の業務から離脱せざるを得ないケースがあったという。

 一方、感染者への誹謗(ひぼう)中傷もある。県内で初めて感染が確認された会社社長は回復後に記者会見し、SNSや会社のウェブサイトにデマや中傷が相次ぎ、「社員や家族までもがつらい思いをしている」と苦境を語った。こうしたことへの心配から、感染者が行動履歴の説明を拒むケースもあるという。情報不足は感染の拡大につながりかねない。

 不当な差別行為などに関し福井弁護士会は会長声明を出し「民事上の不法行為として損害賠償責任が生じ、犯罪行為として処罰の対象にもなりうる」と警鐘を鳴らした。厳に慎みたい。

 ヨーロッパでは、回復して帰宅した人を近所の人が拍手で出迎えている光景もみられる。新型コロナウイルスには誰もが感染しうる上、誰もが気付かないうちに感染させてしまう可能性がある。「敵は人ではなくウイルス」との気持ちで、不幸にして災難に見舞われた人には温かく接したい。

 日本赤十字社は、このウイルスには「病気」「不安」「差別」という三つの顔があり、病気が不安を呼び、不安が差別を生み、差別が病気の拡散につながる「負のスパイラル」となる怖さを指摘。これを断ち切るため、「確かな情報」を広め、差別的な言動に同調しないことや、関係者をねぎらい敬意を払うよう呼び掛けている。

 脅威の最前線で闘う医療従事者に対しては、自宅や職場で一斉に拍手したり、建物を青くライトアップして連帯を示す取り組みが各地で行われている。福井県でも県庁に感謝の横断幕を掲げ、福井城址(じょうし)を夜間、青く照らし出している。

 ウイルスとの闘いは長丁場も予想されている。医療現場に感謝の思いを届け、皆で支え合いたい。

関連記事