フリースクール「福井スコーレ」では、オンラインで子どもたちとつながっている

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で公立学校では、休校中の児童・生徒への影響や学習方法に注目が集まっているが、民間のフリースクールはどのような状況に置かれ、どんな問題に直面しているのか。福井県福井市でフリースクール「福井スコーレ」を運営している小野寺玲さんに現状について寄稿してもらった。

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私は不登校の子どものための居場所であるフリースクール「福井スコーレ」を運営しています。この1ヶ月間、新型コロナウイルスの影響で実際の集まりを中止し、オンライン化に追われていました。

全速力で走りながら語るのは難しく、マラソン中に記者からインタビューを受けている気分です。息は上がっており、ゆっくりと考える時間もありません。ちょっと待って下さいと言いたくなります。

それでもなお、今この状況で、今この状況について考え、語る意味もきっとあるのでしょう。仮に暫定的な答えでしかなくても、今起きていることを共有し、一緒に考えていくために。

順を追って話したいと思います。私にとって新型コロナウイルスは、夜の眠りを急襲するサイレンのようでした。眠りは深く、リスクが叫ばれても心のどこかで、「そんなに大したことはない」と思いたい自分がいました。また目を閉じて、これまでの日常を続けたい。

しかし、数ヶ月で世界は激変します。まさか人と会うことが、避けられるべきことになるなんて。まさか飲み屋から大人がいなくなり、学校から子どもがいなくなり、いつ再開するのか分からないなんて。それがこれほど短い期間で起こるなんて。

新しい日常では、できるだけ家にいることが求められます。社会性が善であったこれまでの日常とは真逆です。「実際に人と会おう。それが豊かな人生だ」。無意識のうちに掲げられていた標語が、反転しています。

新しい日常は、社会からの退避を迫っているとも言えます。そのことで楽になる人もいるでしょう。正直に言って、私のような引きこもりがちな人間にとっては、人とあまり会わない生活は楽な部分もあります。

一方で、人はつながりを求める生き物です。人とつながり、肯定され、この世界に居ていいと思いたいのです。感染症が猛威を振るおうと、核戦争が起きようと、人間のその性質は変わらないでしょう。

私は中学生の頃に不登校や引きこもりを経験しました。人とつながりたい。だけどつながれない。その狭間で苦しんでいました。その後、県外のフリースクールに行き、世界への信頼を僅かに取り戻し、それが次の一歩を生みました。居場所とはそういう役割だと思っています。

だから、実際に会うことが難しくても、不登校の子どもたちとつながり、次の一歩のための基盤を作っていきたい。そう思い、3月からオンライン化の試行錯誤を始めたのです。

オンラインは光の速度で距離を超えます。それはオンラインの美点として取り上げられてきました。しかし、距離に役目はないのでしょうか?きっとあります。私達は距離を細かく調節することによって、人間関係の様々な側面を調節してきました。

例えば、誰とどれくらい距離を取るかというのは、音の選択の方法でもあります。聞きたい音に近づき、聞きたくない音から離れることによって、複数の声がある状況でも私達は話をすることができます。しかしオンラインは、距離のない世界です。もちろん技術的にそれぞれの音量を調節することは可能ですが、オフラインのように柔軟でさり気ない調節はできません。

これは、ささいなことに見えて、致命的な欠点です。距離感の自由は、居場所において重要な構成要素だったからです。距離を等価にするオンラインの長所は、同時に欠点でもあります。

いつか、VRデバイスと強力な物理エンジン(物理法則を再現するソフトウェア)によって、映画「レディ・プレイヤー」のような世界が訪れるかもしれません。精妙な物理法則が支配するVR空間を闊歩し、対話し、生きている実感が湧くような世界。しかしそれを待っている余裕はありません。

このような未来を夢想してしまうのは、私が現実の居場所のあり方にこだわっているからかもしれません。本当に重要なのは、物理エンジンではなく、社会エンジン(これまでの社会にあったものを再現する機能)です。オフラインでの居場所のあり方を持ち込むのではなく、オンラインの法則を理解し、大切な役割を再現していくことです。オンラインの住人になろう。まずはそこからです。

私は今、全国の居場所作りをしている人たちと議論と実践を重ね、このような知見を積み上げています。まだまだ足りないことばかりで、オンラインの限界も感じます。しかしオンラインしか方法がないなら、限界までそれを追求しようと思っています。

非日常は、やがて日常になります。どのようにして新たな日常を作るのか?これを読んでいる皆さんも、それぞれの分野で、その問いと向き合っているのだと思います。そんな皆さんにゆるやかな仲間意識を感じながら、私はこの文章を書きました。いつか、皆さんと話せることを楽しみにしています。オンラインで会いましょう。

Twitter:onoderarei0813

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