聞き取り調査では訪れた店の名前などを明かさない人もおり、感染経路特定の妨げとなっている=福井県内にあるラウンジ(写真と本文は関係ありません)

 新型コロナウイルスの福井県内のクラスター(集団感染)は、接客を伴う飲食店など夜の街を介在して広がっている。感染者への聞き取り調査では、訪れた店の名前を明かさないケースもあり、感染経路の解明に支障を来している。

⇒【D刊】福井県内の感染者の関係図(4月11日までの判明分)

 7人の感染確認と1人の死亡が発表された4月5日の会見。県健康福祉部の宮下裕文副部長は異例の呼び掛けをした。「(濃厚接触者の把握には)本人(感染者)の話が一番大切になる。調査に協力をお願いしたい」。証言が得られず、濃厚接触者を追い切れないもどかしさがにじんだ。

 クラスターの接点は夜間に営業する飲食店に複数あり、そこから家族や会社の同僚らに広がった。そのうちの一つ、福井市のある飲食店では男性客10人と女性従業員2人が感染した。

 この店では、ボックス席で女性従業員が接客していた。利用したことがある50代男性は「かなり密着していて、女の子が入れ代わり立ち代わり隣に座った。感染しやすい狭い空間だった」。元従業員は「夜の店は特殊。マスクをして接客する発想はない」と話し、営業スタイルも感染を広げた一因とみられる。

 こうした店に通っていることを家族らに隠す男性は多い。聞き取り調査に携わる行政関係者は「2次会、3次会に行ったとは言うけれど、店名になると口を割らない」と話す。県の調査では「飲み歩いていたけど、店は分からない」といった回答もあった。

 聞き取りに強制力はない。仕事上、会食などの機会も多い福井市の大手企業の幹部は「夜の街には家族にも言えない『秘密』がつきもの。その秘密が、感染拡大を阻止する上での壁になってしまっているのではないか」と話した。

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