ロサンゼルス空港の手荷物検査場入り口。いつものような乗客の長い列はなく、空港職員ののんびりした姿が印象的だった=2020年3月27日、筆者家族撮影

 米国の3月は、新型コロナウィルスの感染力のすさまじさを思い知らされた1カ月だった。私たち家族が暮らすメリーランド州から、首都ワシントンエリアで初めての感染者が確認されたのが3月5日のこと。今は、全米のほとんどが外出禁止令下にある。

 以前マサチューセッツ州に住んでいた時に、ボストンマラソンテロで外出制限を体験したが、あらためて有事の際の米国市民の結束力はすごいと感じる。今回の場合も、ほかの人と定められた距離をとりながら、認められている散歩や運動、食品の買い物をする決まりを厳格に守っている。一日の大半を過ごす家の中では、大人も子供も、リモートワークやオンライン授業といった方法で社会活動の継続が始まった。

 こうした流れをいち早くつくったのは大学だ。有名大学が早々にオンライン授業への切り替えを決めると、他の大学も次々とそれにならった。寮の退去が呼びかけられ、オンライン授業への変更のために履修を辞めた場合は、授業料の返金に応じることを決めた学校も多い。こうして留学生をはじめ、ほとんどの学生が自宅に帰ることになった。

 ロサンゼルス近郊の大学に通う長女もメリーランドに戻って、オンライン授業を続けることにした。もともとは4月にイースター(復活祭)の春休みで帰省を予定していたが、この先、全米内の移動はいつまで可能なのか、まったくわからないからだ。

 メリーランドへ帰る日、長女はロッカーの荷物を持ち帰るため、大学から指定された時間にキャンパスを訪ねた。カリフォルニア州は全米で最も早く、外出禁止令が出ている。学校の閉鎖が決まって2週間ぶりに訪れた構内に学生の姿はまったくなかった。

普段は世界有数の利用者数でにぎわうロサンゼルス空港。既に運航便が大幅削減になり、手荷物検査場はガラガラだった=2020年3月27日、筆者家族撮影

 「何しに来たの?」。指示された建物に向かうと女性警官に呼び止められた。理由を伝えると、携帯電話で大学職員に確認してようやく建物に入れてもらった。「まだか?まだか?」。ロッカーに着くと、今度は黒人の男性警官がドアのそばで急かし続けた。荷物を取り出すと、大学は立ち入り禁止のため、至急立ち去るように指示されたという。

 夜は、ワシントン・ダレス空港に向かう便に乗るため、ロサンゼルス空港へ移動した。既に運航便が大幅削減となったターミナルはほとんどの店舗が閉まり、閑散としていた。人の動きが途絶えた巨大空港で暇を持て余している空港職員の姿が心に残ったらしい。メリーランドに到着後、春休みに搭乗を予定していた便は欠航が決まった。

 リアルな人のつながりをどんどん断ち、強制的に市民を安全なオンライン社会に退避させる段階はほぼ完了したのだろう。トランプ大統領や各州の知事たちは感染ピーク時期の見通しを説明し始めている。米国は長期化も見越してウィルスと“戦争”している。(渡辺麻由子)

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 夫に同行し米国生活する筆者が現地の生活をつづります。子どもを通して見えてきた教育事情や働き方の違いなどを紹介します。

 ■渡辺麻由子(わたなべ・まゆこ) 元福井新聞記者。結婚を機に福井を離れ、退職。夫の留学で2012~13年米国マサチューセッツ州で生活し、帰国後フリーライター・編集者として活動。夫の転勤で18年カリフォルニア州、19年からはメリーランド州で暮らしている。ハイスクール2年生の二女と、カリフォルニア・ロサンゼルスに残り、大学に通う長女がいる。

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