若新雄純さん

若新雄純です。香川県議会で、18歳未満の子どものゲーム時間を1日60分(休日90分)までとする「ネット・ゲーム依存症対策条例」が可決されました。福井県内でも独自ルールをもうけている学校があるらしく、スマホやゲームとどう付き合っていけばよいか悩んでいる親子も多いようです。この条例、可決前から話題になっていて僕もテレビやラジオでよくコメントしていたんですが、「時間を制限する」ことにはかなり違和感があって、いろいろ調べてみました。

結論から言うと、「ゲームを長時間プレイすることが依存症の原因ではない」ようなんです。だから、ゲーム時間を制限しても、依存症対策としてはあまり意味がない。

参照元などはここでは割愛しますが、依存症の原因というのはいろいろ研究されていて、話題のゲーム依存症は「行為依存」というものに分類できるようです。ここで重要なのは、行為依存はその行為そのものが原因ではない、ということ。つまり、ゲームの「やりすぎ」によってゲーム依存症になるわけじゃないんです。やりすぎてるんだからすでに依存症なんじゃないのか?という声も聞こえてきそうですが、行為依存の問題は、それをしていないとすごく不安になったり、気になって眠れなくなってしまったり、他のことがまったく手につかなくなってしまうといった精神的に不安定な状態になること。毎日ゲームをやりすぎていても、学校では元気に過ごし、夜はぐっすり眠り、他のことも普通にできているなら依存症ではないということです。

では、何が原因なのか。ゲーム依存症が分類される「行為依存」の多くは、ふだん友だちとの人間関係が上手くいってなかったり、周囲から認めてもらえず自分に自信がないという場合に、その不安や孤独をごまかすために没頭し過ぎてしまうことから起きるようです。学校では勉強にもスポーツにも成績がついて、誰でも上位になって褒めてもらえるわけじゃないし、誰でもクラスの人気者になれるわけじゃない。一方ゲームの世界では、自分が主人公になって、やればやるだけ順位やスコアが上がっていく。そこが精神的な「逃げ場所」になってしまうのも納得です。

だから、親や先生たちに求められるのは、勉強やスポーツが苦手な子どもに対しても、何か他に得意なことや自信が持てるようなことに気づいてあげて、本人が誇りを持てるように応援や肯定をしてあげることでしょう。それは、何でもいいんだと思います。誰かと比べて上位である必要もない。人とは違うちょっとした趣味、視点、考え方を認めてあげる。周囲にいる大人たちが、その子どもの「存在の個別性」に注目し、尊重してあげることが大切です。

それなら、もし子どもがゲーム好きで得意なら、中途半端に制限なんかせずに、自分の中の一つの自信になるまでとことんやらせてあげればいいんじゃないでしょうか。こうやってゲーム依存が話題になると、大人はついつい「またゲームばっかりしてるの?」と注意してしまう。それだと、どんなに得意でも、負い目を感じてしまって自信にはつながりません。むしろ、ゲーム内容の話を聞いてあげたり、一緒に対戦してあげたり、はたまた大会への出場をすすめたり…。とことん前向きに付き合ってあげれば、少なくとも不安や孤独に襲われことはなくなるでしょう。そうやって心が安定すれば、学校生活や人間関係も充実していくはずです。

そういえば、僕の両親は学校教員で、小さいころ大ブームだったテレビゲームには根拠のない激しい憎悪を持っていました。当然、ゲームを制限することは親としての大正義だと信じていたようです。弟はそんな親の言うことなどちっとも聞かず、いっとき、ある有名なゲームソフトに没頭して世界ランキングに挑戦していました。本人曰く「指がおかしくなるまで」毎日やり込んでいたようです。ある日、ついにその世界ランキングの上位に並んだという連絡とそのプレイ画像が僕の携帯に送られてきました。そして、「今日をもってこのゲームからは引退する」といって、一切プレイしなくなりました。弟はその後しばらくして金融機関に就職したのですが、若くして営業成績の首位を連覇するようになり、家族みんなで喜んでいました。そんな弟は「ゲームを極めるのと一緒だ」といっていました。それは、営業の仕事とゲーム内容が一緒だという意味じゃない。彼の中での「とことんやれば必ず結果を出せる」という自信と誇りが、それを可能にしたんだと思います。

時間をかけて没頭したことに価値があったのかどうかは、長い時間でみなければ分からないことも多いと思います。でも、自分の中で「何かを極めた」という自信や納得感は、人生のいろんなステージを常にはげましてくれるはずです。ちょっと大げさかもしれませんが。

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