十数年前に「大動脈解離」の手術を受けました。その後、「心臓の弁が弱くなり、血液が逆流して、心不全が起きやすくなるのではないか」いう話を耳にして不安に感じています。どんなことに気を付ければいいのか教えてください。(70代男性)

【お答えします】西田聡・福井県立病院心臓血管外科医長

 ■血液逆流すると心臓に負担

 十数年前に大動脈解離を発症され、緊急で人工血管置換術を受けられたのだと思います。大動脈の病気なのですが、その根元にある大動脈弁にまで解離が及ぶと大動脈弁が心臓側に落ち込み、逆流を起こしてしまうことがあります。大動脈弁を人工弁で取り換えていると手術時間が長くなってしまいますので、一般的には大動脈弁を温存した、いわゆる大動脈弁つり上げ手術が同時に行われます。逆流が少し残ってしまうことがありますが、救命が優先されるためやむを得ません。

 大動脈弁は心臓の出口でドアの役目を果たしています。心臓から大動脈に血液が押し出されるときに開き、大動脈から血液が逆流しないように閉まるといったことを繰り返しています。この大動脈弁に逆流が起こる病気を「大動脈弁閉鎖不全症」と呼んでいます。心臓にとっては負担になりますので、逆流がひどくなると心臓が弱り、全身に十分な血液を送り出せなくなってしまいます。体を動かしたときに呼吸が苦しくなったり、せきが出たりする心不全症状が現れるようになります。

 ■心臓超音波やCT検査で 病状把握を

 軽い大動脈弁閉鎖不全症は、内科的治療で大丈夫です。血圧を下げる薬を飲んでいただきます。逆流を元どおりにすることはできませんが、血圧を下げることで弁の変形を抑え、逆流を減らし、病気がひどくなって心不全を起こさないようにします。ただし、薬をしっかり飲んでいても年齢とともに病気が進行し、重い大動脈弁閉鎖不症になってしまうことがあります。症状が現れたり、症状はなくても心臓が大きくなってきたりした場合には手術が勧められます。ほとんどの場合、人工弁に取り換える手術になります。

 手術から10年以上が経過しても症状がないようでしたら、まず問題はないと思います。しかし、現在どのくらいの逆流があるのか知っておくことは大切です。心臓超音波検査を受ければ、簡単に逆流の程度を知ることができます。大動脈に由来した逆流ですのでCT検査も必要になります。手術後の状態を知るためにもCTはぜひ受けていただきたい検査の一つです。かかりつけの先生にご相談されることをお勧めします。

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