東京五輪・パラリンピックの新たな大会日程が決まり、表示が再開したJR東京駅前のカウントダウン時計=3月30日夜(魚眼レンズ使用)

 仕事の進め方が徐々に変わってきている。

 先日の取材では、選手側から「リスクを下げるため、お互いの安心のため、風通しのいいところで話をしませんか」というリクエストがあった。

 それに対応する形で、部屋の窓を開け、マスクをつけたままで2メートルほどの距離を取って話を聞いた。さして違和感はなかった。

 これからは、映像を通しての取材も増えてくるだろうが、写真は現場に足を運ばなければならない。メディアの方でもページを作るための葛藤が続きそうだ。

 取材現場の空気は変わりつつあるが、東京オリンピック延期の決定を受け、早くもIOCと組織委員会は来年の日程を決めた。

 7月23日に開会式、8月8日に閉会式を行うという。

 2020年に予定されていたものとほぼ変わりはないが、あまりに早い決定で驚いた。早すぎるのではないか、と。

 当然、この日程には賛否両論がある。組織委としては、ほぼ同じカレンダーで動いた方が調整しやすいということだろう。

 また、IOCとしても、早めに日程を決めることで、各国際競技連盟(IF)が選手たちの選考基準を決めやすいという配慮もあったはずだ。

 ただし、見過ごされたこともある。7月下旬から8月上旬にかけては、日本の最も暑い時期だ。

 そのためにマラソン、競歩の札幌移転問題が浮上し、IOCの独断で決定されたのではなかったか。

 少しでも開催時期をずらした方が、選手たちの健康、そしてパフォーマンスにもプラスになるはずだ。

 陸上競技の持久系の種目ばかりではなく、屋外でのサッカー、ホッケーなど、暑さがネックになっている競技はたくさんあるというのに…。またしても「段取り」が優先された感は否めない。

 加えて、延期の発表から間もない来年の日程発表に、メディアからは疑問の声も上がっている。

 アメリカの全国紙「USA TODAY」のコラムニスト、クリスティーン・ブレナン氏はこう書く。

 「今日、オリンピックの日程を知る必要があっただろうか?」

 スポンサーも、選手たちも、オリンピックのスケジュールを現時点で知る必要はどこにもなかったのではないか、と。

 「せめて暗いトンネルを抜けて光が見える時まで待てなかったのか」

 確かに、コロナウイルス禍がどこまで広がるのかがまったく見えない状況で、準備は前に進められるにせよ、拙速だったという印象だ。

 延期、そして新日程の決定プロセスを見ていると、IOCと組織委員会は「世界」に対して目配りができているのか、かなり疑問だ。

 新型コロナウイルス禍の収束が、依然不透明の状況で、東京オリンピックに関してはまだまだ大きな問題が待っているような気がしてならない。

 それが杞憂に終わることを願っている。

生島 淳(いくしま・じゅん)プロフィル

1967年、宮城県気仙沼市生まれ。早大を卒業後広告代理店に勤務し、99年にスポーツライターとして独立。五輪、ラグビー、駅伝など国内外のスポーツを幅広く取材。米プロスポーツにも精通し、テレビ番組のキャスターも務める。黒田博樹ら元大リーガーの本の構成も手がけている。

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