【論説】新型コロナウイルスの感染が世界的に深刻化する中、東京五輪・パラリンピックが1年程度延期されることが決まった。選手や観戦客の命と健康を危険にさらすわけにはいかず、賢明な判断だったといえよう。

 ただ、来年夏なのか、春もありうるのか、正式な日程が決まらない以上、選手の不安は拭えない。国際オリンピック委員会(IOC)は大会組織委や日本政府、東京都と連携し、できるだけ早く開催日程を明らかにする必要がある。

 懸念されるのは、新型コロナの感染がいつまで続くのか見通しが立たないことだ。安倍晋三首相やIOCのバッハ会長が開催を「新型コロナ感染症に打ち勝った証し」としているが、ワクチンができるまでは終息は難しいという有識者の指摘もある。政府は各国とも協調し、終息に向けて全力を挙げるべきだ。

 感染の行方に加え、約4割の代表選手選考が未定であるため、計画は来年夏の開催を視野に進むことになるだろう。ただ、大会関係者と観戦客が予約していたホテルは1年後には既に別の予約が入っているところが多いという。影響は広範囲に及び、一筋縄ではいかないはずだ。

 来年夏には水泳と陸上の世界選手権がそれぞれ福岡市と米国で開催される予定となっている。陸上は世界陸連が変更の意向を示しているとされるが、水泳についても再検討を求めなければならない。競技会場の確保も一から始めることが求められる。野球やサッカー、バスケットボールなどプロリーグとの競技日程の調整も必要だ。

 チケット購入者と約8万人の大会ボランティアに対して、組織委はそれぞれの権利が損なわれることがないよう、十分に配慮すると約束したのは当然だが、払い戻しやボランティアの補充などをどうするのか。6年半をかけて積み上げてきた国家プロジェクトだけに課題は山積みだ。

 ホテルや競技施設運営者、国際競技連盟などが、契約の変更や解消に伴う損失の賠償をIOCや組織に求めてくる可能性も否定できないという。延期による追加コストは数千億円ともされる中、さらに膨れ上がることが想定される。組織委の予備費は約270億円にすぎず、東京都と国のどちらが負担するのかで、もめることにもなろう。

 選手選考がやり直しになる競技も出てくるとの見方もある。延期に伴う関係者への影響はある程度避けられないだろう。ただ、利害関係者の訴訟沙汰などで、祝祭の舞台となるべき五輪・パラリンピックの意義が損なわれるような事態は何としても回避すべきだ。大会成功に向け関係者の自制と寛容を求めたい。

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