【越山若水】聞き慣れないカタカナ言葉だけに、えも言われぬ緊迫感が漂う。「ロックダウン」(都市封鎖)。しかも前置きに「オーバーシュート」(感染爆発)と来れば、不気味さは倍加する▼新型コロナウイルスの感染者急増を受け、東京都の小池百合子知事は大型イベントの自粛や不要な外出を控えるよう要請した。「この3週間が『オーバーシュート』の分かれ道」「大規模な感染拡大が認められた場合『ロックダウン』もあり得る」と危機感を示した▼かつての東京、江戸には地域外への出入りを制限する仕組みがあった。町境に設けられた木製の柵と門「木戸」である。道筋に家がびっしり立ち並び、ここを通らないと隣町へは行けない。治安維持が目的で、盗賊などが現れたときに門番が逃げ道を閉ざしたという▼ただ明暦の大火(1657年)では木戸の存在が裏目に出た。荷車を引いた町民らが1カ所に集中し、逃げ場を失った多くの人が犠牲になった。屋根によじ登った人だけ辛うじて助かった(「オランダ商館長が見た江戸の災害」F・クレインス著、講談社現代新書)▼江戸版ロックダウンの木戸は火事には逆効果だったが、東京都が検討する現代版ロックダウンは人々の命を守る最後のとりでとなる。姿の見えない強敵にイライラも募るだろう。しかし「コロナ疲れ」で気が緩む「コロナ慣れ」だけは厳に慎みたい。

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