東京五輪開幕までの日数などを伝える大型画面に、無作為に表示され重なって見える数字=3月22日午後、東京・新橋駅前

 国際オリンピック委員会(IOC)の「株」が下がりっぱなしだ。

 IOCは、かたくなに「予定通りの開催」を主張してきたが、ここに来て身内であるIOC委員、アメリカの陸上競技、水泳の競技連盟からの延期要請などが相次ぎ「延期を含めた複数のシナリオの検討に入る」とし、4週間以内に結論を出すとした。

 3月17日に開かれた理事会では通常開催を確認していたが、わずか5日で方針転換。一貫性がないと見られるのも当然だ。

 ただし、「4週間以内」という設定に、世界のアスリートは怒りを露わにしている。

 ヨーロッパの選手の多くは外出禁止令下で練習もままならない状況だし、「なぜ、延期の判断を即刻できないのか」とSNSなどを通じて発信している。

 開催はもはや現実的ではないと捉える選手もいて、アメリカの陸上、七種競技の選手であるチャリ・ホーキンズのインスタグラムを見ていたら「オリンピックは延期された(The Olympics have been postponed.)」とテキストを打ち込んでいた。

 もちろん、正式発表されたわけではないが、欧米の選手たちの意識としては、すでに延期されたも同然なのだ。

 日本の選手の場合、これだけハッキリと書ける選手はいないだろう。

 ただし、延期の発表が遅れれば遅れるほど、オリンピック関連のことが空しく見えてくる。

 3月20日には宮城県に聖火が到着したが、26日から予定されていた聖火リレーの意味は大きく変容せざるを得ない。

 「東京2020」と銘打ち、チケットが当たるプレゼントの広告も、もはや訴求力は失せた。

 競技面への影響も続いている。

 4月2日から無観客で実施が予定されている競泳の日本選手権は、オリンピックの代表選考会も兼ねている。もしも、開催時期までに延期の発表が行われなかったとしたら…。

 本来は、各種目で2位以内に入り、かつ派遣標準記録を突破すればそのまま代表に内定するが、果たしてその権利は2020年だけのものなのか、それとも2021年や、2022年に持ち越されるものなのか? 

 先が見通せない状態では、プールサイドでの代表内定インタビューも、空虚なものになってしまうだろう。むしろ、代表を選んでしまうのは、マイナス面の方が大きいかもしれない。

 IOCの決定の遅れが、各方面に悪影響を及ぼしている。

 今、世界は1週間ごとに大きく変化しているが、IOCのアンテナの感度は鈍いと言わざるを得ない。失望の声が上がるのは当然だと思う。

生島 淳(いくしま・じゅん)プロフィル

1967年、宮城県気仙沼市生まれ。早大を卒業後広告代理店に勤務し、99年にスポーツライターとして独立。五輪、ラグビー、駅伝など国内外のスポーツを幅広く取材。米プロスポーツにも精通し、テレビ番組のキャスターも務める。黒田博樹ら元大リーガーの本の構成も手がけている。

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