【論説】新型コロナウイルスの感染が世界的に深刻化している中、国際オリンピック委員会(IOC)が東京五輪開催について「予定通り」としてきた態度を一変させ、4週間以内に結論を出す方針を明らかにした。「中止は問題解決にも誰の助けにもならない」と強調していることから延期の可能性が強まったといえる。

 延期などの検討に入るには尚早と言い続けてきたIOCに対して、五輪で活躍したアスリートが「私たちの健康を脅かしたいのか」「鈍感で状況が読めていない」「無神経で無責任」などと次々に批判の声を上げていた。複数の国内オリンピック委員会や国際競技連盟からも延期を求める声明などが出されている。

 こうした声を受け、IOCは再検討を迫られた格好だ。新型コロナの影響で五輪代表選手の約4割が未定で、出場権獲得を目指していた予選大会も相次ぎ中止に追い込まれている。IOCの方針転換は遅きに失した感は否めず、組織としてイメージダウンを招いたと言わざるを得ない。

 一方で、延期の時期をいつにするのかは、まさに難題だ。年内では新型コロナの終息は見通せず、巨額の放映権料を支払う米国メディアはアメフトなど人気スポーツのシーズンとなる今秋以降の開催は否定的とされる。来年夏にしても陸上や水泳の世界選手権とぶつかり、2年後では代表選手の選考のやり直しも求められる可能性など課題は山積みという。

 延期によって選手や観客、運営を担う大会組織委員会、放送権者、スポンサー企業などに、どういった影響が出るのか。かなりの複雑な作業となることは間違いない。そうした中でも、アスリートファースト(選手第一)を貫き丁寧で慎重な検討を重ねる必要がある。とりわけ、選手が不利益を被ったり、公平な出場機会が損なわれたりすることはあってはならない。

 IOCは「大会組織委や日本政府、東京都と連携し、延期案を協議する」とも明言している。マラソンと競歩の札幌市への移転を決めた際の強硬姿勢を繰り返すようでは、まとまるものもまとまらないだろう。既に約450万枚を販売したチケットはそのまま有効となるのかなど、さまざまな検討が欠かせないだけに、これまで以上に連携を深めなければならない。

 26日に福島県からスタートする聖火リレーに関して大会組織委は計画通り実施するとしているが、スタート後に大会延期が決まった場合、どう取り扱うのか。出発を当面見送るという選択肢も必要だろう。「完全な形での開催」(安倍晋三首相)を目指すなら、その序章となる聖火リレーも対象とすべきではないか。

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