【越山若水】「○○ファースト」は2017年の新語・流行語大賞でベストテンに入った。トランプ米大統領の「アメリカファースト」、小池百合子都知事の「都民ファースト」が引き金である▼その影響か、以後いろんな場面で目にする機会が増えた。世界各国のリーダーが「自国ファースト」を声高に叫び、サービス業では「顧客ファースト」を目標にする風潮も強まった。安倍1強体制が続くわが国では「官邸ファースト」の忖度(そんたく)政治が批判の的になった▼同じ流れにあるのが「アスリートファースト」だろう。国際オリンピック委員会(IOC)は昨年10月、東京五輪のマラソンと競歩の会場を札幌に移すことを決定した。前月のドーハ女子マラソンで高温多湿のため4割以上が棄権。選手の健康に配慮する理由である▼自分から発した言葉がわが身にはね返るとは、IOCも想定外かもしれない。新型コロナの猛威で7月開催が微妙な東京五輪。バッハ会長は中止や延期の可能性を否定してきたが、ついに方針転換を表明した。それもこれも選手や競技団体から反発が噴出したからだ▼ある金メダリストはツイッターで「IOCは私たちや家族の健康を危険にさらしたいの?」と怒りをぶちまけた。IOCは4週間以内に結論を出す。マラソン会場で一度「アスリートファースト」を承諾した日本としては、延期の判断も致し方ない。

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