新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真(国立感染症研究所提供)

 自治体が公表しなかった新型コロナウイルス感染者の勤務先を自ら積極的に明らかにする事業者が出ている。誤った情報が広がるのを防ぎ、顧客や消費者に安心してもらうためで、専門家も「長い目で見れば企業価値は高まる」と評価する。

 福井県内で初の感染者が確認された翌日の3月19日、日華化学(本社福井県福井市)は、ホームページで感染者が自社役員であることを公表した。

 ⇒福井の感染男性の濃厚接触者32人に

 自社役員が発熱し検査で陽性と判断されるまでの経緯や本社の約470人のうち、約250人を在宅勤務とする対応などを示した。公表の理由を「上場企業としての社会的責任、当該者が多方面に与える影響の大きさを考慮した」とした。

 佐賀県佐賀市中心部にあり、結婚式場としても利用されている「ホテルマリターレ創世」。佐賀県が20代男子大学生の感染を確認した翌日の14日、アルバイト先であることをホームページで公表した。

 ホームページでは、大学生が11日午後10時から翌12日午前7時にかけてフロントで勤務したが、同時間帯にいた同僚2人と共に利用客との接触はなかったと明記。さらに時系列でホテルの対応を示し、14日の始業時から全館を清掃・消毒し、濃厚接触者とされた同僚2人の陰性が夕方には判明したとした。

 佐賀県は「勤務中に不特定多数との接触がなかった」ことを理由にアルバイト先を公表していなかった。ホテルの佐藤靖昭総支配人は「SNSなどを通じて誤った情報が拡散しないよう先手を打った」と明かす。

 セブン&アイ・ホールディングスも8日と12日にそれぞれ、山梨県と大阪府が確認した感染者がコンビニの従業員だったとし、店舗名を明らかにした。両府県が勤務先を把握しない段階での公表だった。同社担当者は「不特定多数が利用するため、お客の安心・安全を優先している」とし、店舗休業などの対策を明示することが重要とする。

 ホテルマリターレ創世とセブン&アイ・ホールディングスではいずれも、問い合わせが殺到する事態にはなっていないという。企業の危機管理に詳しい中村克己弁護士は「仮に売り上げが落ちたとしても、情報を正確に伝える姿勢は利用者に誠実に映る」とし、「企業のブランドや信頼をより重視した対応だ」と評価する。

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