【論説】都会から地域へ人の流れを創出しようという「流動創生」に南越前町が全国に先駆けて取り組んでから、新年度で6年目を迎える。

 小さな地域からの全国へのアプローチは、会社と居住地が離れたリモートワークや多拠点居住など、多様な暮らし方が浸透してきた時代に受け入れられつつあり、リピートで同町を訪れる定期的な人の流れも出始めた。その流れを太く確実にする次のステップへとつなげるには、やはり人が鍵になろう。ニーズにあった地域の魅力をいかに発信できるかが問われる。

 その地域に居住しないが、地域と継続的に関わりを持つ人を指す「関係人口」や、生活拠点を複数持ち、移動しながら暮らす「多拠点居住」は、いわば人口のシェアリング(共有)で、過密に悩む都会と人口減に苦しむ地方の双方にメリットが生じる。そうした人の流れをつくり出そうというのが南越前町が取り組む流動創生だ。

 町担当者によると「田植えを体験したいなど単なる農業参加ではなく、祭りなど地域行事に担い手として参加してもらうこと」を条件に、全国に会員制交流サイト(SNS)などを通じて「地域暮らしの体験者」を募っている。企画には、町内運動会の準備・出場などもある。「都会の若い世代にとって、大人になってからの運動会は新鮮」で、好評だという。

 参加者らに対し、町内で「お試し居住」の場として、地域おこし協力隊員の住む民家をシェアハウスとして提供。利用者は5年間で200人を超えている。

 受け入れる地域の人々も見慣れない顔が交じることで日常の行事が非日常に変わり刺激が生まれる。本年度、東京大の学生が町に滞在し調査した流動創生報告でも、こうした企画が参加者と受け入れ側の双方の満足度が高いと紹介された。

 6年目の課題として、町は「来てもらいやすい場の設定」を挙げる。暮らしに多様性を求める人のアンテナにかかるテーマは何なのか、知恵を絞っているという。「リピーターは人にひかれてが多い」というあたりにヒントがありそうだ。

 政府は地方創生と東京一極集中の是正を目指し新年度、主に東京などに住みながら福井などの地方で兼業や副業をする人の移動費として、3年間で最大150万円を支給する支援制度を始める。どういったケースが対象となるかなど今後、精査する必要はあるが、こうした制度も追い風にして「流動創生」を加速させることができるか。南越前町の取り組みに注目したい。

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