【越山若水】カラフルな画面の中央に、こちらをじっと見つめる無数の目と、地中から突き出て何かを必死につかもうとする多くの手―。若狭町の熊川宿若狭美術館で見た、ちょっと不気味な作品が心に残った▼県内の障害者や、特別な支援が必要な人たちを対象にした「きらりアート展」で準大賞に選ばれた「イラナイモノ」と題した作品だ。障害者について報道される機会が増えた。だが、作者の柴山信宏さんは「きれいな部分が表立っているだけで、差別や偏見が無くなったわけではない。見えにくくなっただけ。社会の二面性を色の明暗で表現しました」▼会場には第10回展の入賞選抜作品が並んでいる。世話になっている病院の先生をキャラクター化したり、水を抜いた池と多様な生き物を描いたり、画面全体を線だけで黒く塗り込めたり、実に多彩だ▼展覧会実行委委員長の長谷光城さんは「障害者は作品づくりの間、生きていることを実感しているよう。それぞれの表現は独自性が強く、誰もまねのできない一代限りのアートとして私に感動を与え続けてくれています」▼近年「アウトサイダー・アート」とか「アール・ブリュット」(生の芸術)と呼ばれる正規の芸術教育を受けていない人たちの作品が注目されている。東京パラリンピックに向け展覧会も開かれている。「描きたいから描く」。強い思いが見る者に突き刺さる。

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