【論説】保釈中の被告らが逃亡する事件が相次いだことを受け、森雅子法相からの諮問を受けた法制審議会で、保釈制度の見直しに向けて刑法や刑事訴訟法の改正の議論が本格化する。衛星利用測位システム(GPS)を用いた「電子監視」の導入などが検討課題となる。

 昨年は逃亡事件が相次いだ。神奈川県や大阪府で保釈中に実刑が確定したり、保釈を取り消されたりした被告らが逃走。年末には特別背任罪などで起訴され、保釈中だった前日産自動車会長カルロス・ゴーン被告が国外に逃亡した。

 全国の地裁や簡裁が保釈を許可する割合(保釈率)は2003年の11・4%から18年には32・1%と3倍近くに増加している。09年の裁判員制度導入を機に、裁判所は保釈に前向きになった。一般市民が参加する裁判員裁判では供述調書よりも法廷での供述が重視され、被告が弁護人とよく話し合い、十分に準備する必要があるからだ。保釈の流れは今後も変わらないとみられる。

 しかし、逃亡事件は裁判や刑の執行に支障を来すばかりでなく、地域住民を不安に陥れ社会的な影響が大きい。では、どう逃亡を防ぐのか。そこで浮上しているのがGPSの端末を被告の身体に装着して行動を把握する電子監視の導入だ。

 1990年代後半に米国で始まり、保釈中の被告の在宅を確認したり、ドメスティックバイオレンス(DV)の加害者が被害者に近づかないようチェックしたりしている。英国やドイツ、韓国でも導入されている。

 日本の保釈制度に組み入れる場合、保釈された人の足首などに端末を付け、裁判所に指定された住居から遠く離れたり、空港などに近づいたりしたら、監視担当者に警報が行くような仕組みが考えられるという。

 今は保釈金しか逃走を防ぐ担保がないが、GPS監視の導入で保釈が認められやすくなると、弁護士の間でも肯定的な意見が少なくない。ただ、運用次第では個人のプライバシーの領域に踏み込み、人権を制約することになりかねない。海外では壊して逃げるケースも少なくないという。運用ルールも含め、慎重な検討が求められる。

 刑事裁判における「推定無罪」の原則の下、逮捕・起訴されても逃亡や証拠隠滅の恐れがなければ、被告が普段と変わらない生活を送り、裁判を受けられるようにするのが保釈制度の趣旨だ。

 だが実際には、否認すれば保釈はなかなか認められない。執拗(しつよう)に自白を迫られ勾留は長期化。「人質司法」と国際的にも批判されている。冤罪(えんざい)を生む恐れもある。保釈制度の見直しを、こうした現状を改善するきっかけにしてもらいたい。

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