【論説】越前町が主催する「越前 蟹(かに)と水仙の文学コンクール」(福井新聞社共催)が本年度で20回の節目を迎えた。町が誇る越前がにと越前水仙を題材に、詩と俳句の作品を全国から募り、地元特産物のPRにつなげている。今回の審査結果がこのほど発表され、応募数は前回より3割以上増えた。観光、文化両面の振興につながる取り組みとして、今後も周知を図り、末永く続けていってほしい。

 2000年度に合併前の旧越前町がカニを題材に募集したのが始まりだ。翌01年度から水仙も加えた。以降も毎年続き、今回は詩と俳句の両部門に全国の小中高生、一般から計6007点が寄せられた。

 前回が4536点だったから約1・3倍増だ。町は県内の小中高校や観光施設のほか、県外の道の駅などにもチラシを送っている。新聞、雑誌への広告掲載を含め、広報活動の効果が表れているようだ。埼玉県の中学校から学年まとめての応募もあったという。

 審査は国内詩壇をリードする坂井市出身の現代詩作家、荒川洋治さんらが担っている。入賞作を読むと、カニ、水仙という題材は共通ながら、個々の作品には子どもから大人まで多様な人生が見えて味わい深い。

 「黄ゆびわカニの王様えちぜんがに」。小学3年生の俳句は、子どもながらに地元の名物を誇らしく思う気持ちが素直に表れ、ほほ笑ましい。

 前回の入賞作だが、印象深かったのが小学生の部の「すいせんがにおってきたら2年生」という俳句だ。さわやかな花の姿が、すくすく成長する児童の明るい未来と重なる。一方、今回の一般の部では「水仙を見ながら徐行介護バス」という入賞作も。大人になり、介護で厳しい生活を送る中で見る水仙は、子どもの頃とはまた違った思いを抱かせるのだろう。

 コンクールの運用については、町が少しずつ変えている部分もある。例えば13年度からは毎回、「家族」「旅」といったテーマを設けている。今回は「ふるさと」だった。テーマが決まっていた方が、創作に当たってイメージを絞りやすくなる効果が考えられる。

 16年度から始めたのが、事前の町内バスツアーだ。漁港で越前がにの競りを見学したり、水仙畑に足を運んだりして、作品作りのヒントにしてもらう。

 担当者は「今後も長く続けていくため、必要なアレンジは加えていきたい」としている。21回目はどんな形になるのか。残念ながら今月20日に予定されていた本年度の表彰式は新型コロナウイルス感染症の影響で中止となったが、次回以降に切り替え、コンクールがさらに発展していくことを期待したい。

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