メリーランド州の大型スーパーでは、新型コロナウィルスへの警戒から、トイレットペーパーが買い占められて商品棚が品薄になっていた=3月7日、筆者撮影

 3月に入って米国の新型コロナウイルス感染が急速な勢いで拡大している。

 「とうとう感染者が出たんだ」。3月5日、首都ワシントンDCエリアでは初めて、メリーランド州で感染者が確認されたことが発表されると、在留邦人たちからはそんな声が聞こえてきた。

 感染者数が目に見えて増えてくると、それまでは比較的落ち着いていた日常生活に変化が出てきた。イベントの中止や自粛、トイレットペーパーや市販の風邪薬、消毒用アルコールなどが店頭から消えた。カリフォルニア州サンフランシスコ沖には、感染者を乗せた大型クルーズ船「グランド・プリンセス」がやってきて、連日大きく報道された。まるで、これまで日本から報道されてきた出来事をそっくりなぞるかのような状況が米国で起こっている。

 ただ、行政の危機管理に関しては日米の違いがみえる。日本では鈴木直道北海道知事が「緊急事態宣言」を出し、学校の休校、外出自粛を求めたことが議論を呼んだ。国会では、国が新型コロナウィルスのための緊急事態宣言を出すことを可能にする特別措置法が間もなく成立する見通しだ。

 それに対し、メリーランド州では初感染がわかったその日のうちに、ホーガン州知事によって「非常事態宣言」が発表された。米国では大規模災害での非常事態宣言は珍しくない。マサチューセッツ州に住んでいたときは、ハリケーンと猛吹雪で非常事態宣言を経験した。そのときは、学校の休校と官公庁休業などが指示され、猛吹雪では一般車両の通行禁止と高速道路閉鎖も実施された。

 一方、今回のメリーランド州の非常事態宣言は、州の保健当局や危機管理部門などの連携機能を強化するもので、12日には州内すべての学校に対し、16日から27日まで休校にする措置が決められた。前日の11日はワシントンDCのボウザー市長が、感染疑いがある場合に隔離や検疫を強制することができる非常事態宣言と、公衆衛生上の緊急事態を宣言するなど、米国では地方政府が感染を封じ込めるための取り組みを強める動きが加速している。

 世界中から留学生が集まる全米各地の大学も、キャンパスが感染源にならないよう、神経をとがらせ、対応に乗り出した。ロサンゼルス近郊の大学に通う長女には、3月初め、学校から全学生に向けて「4月初旬の春休み期間中に米国外へ出ないように」通知が届いた。UCLAなどのカリフォルニア大各校やハーバード大、コロンビア大、ジョージタウン大など多くの大学が次々とオンライン授業への切り替えを決めて、「学校に来ないよう」学生に呼びかけている。

 オンライン授業の利用は、各地の教育委員会でも検討されている。二女が通うメリーランド州の高校を管轄する教育委員会も、休校のときに使用するコンテンツの準備を進めている。事態の収束が見えない中、長期化を見越して、生徒の安全と授業の継続を両立させる策はないか、模索が始まっている。(渡辺麻由子)

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 夫に同行し米国生活する筆者が現地の生活をつづります。子どもを通して見えてきた教育事情や働き方の違いなどを紹介します。

 ■渡辺麻由子(わたなべ・まゆこ) 元福井新聞記者。結婚を機に福井を離れ、退職。夫の留学で2012~13年米国マサチューセッツ州で生活し、帰国後フリーライター・編集者として活動。夫の転勤で18年カリフォルニア州、19年からはメリーランド州で暮らしている。ハイスクール2年生の二女と、カリフォルニア・ロサンゼルスに残り、大学に通う長女がいる。

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