【論説】政府は、地球温暖化防止のためのパリ協定で定められている2030年の温室効果ガス排出削減目標の国連への再提出を、期限の2月末までに行わず、先送りした。加えて、削減目標を見直さないことも決めている。「気候の危機」が叫ばれ、削減目標の上積みが求められる中、消極的な姿勢が世界から批判を浴びるのは避けられない。

 15年に採択されたパリ協定は「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度より十分低く保ち、1・5度に抑える努力をする」との目標を掲げる。だが、現在の各国の削減目標では今世紀末には3度近く上昇するとの予測もあり、引き上げが不可欠だ。

 削減量の上積みを図るための仕組みとして、協定は各国に目標を5年ごとに再提出することを求めている。その第1弾が今年11月、英国で開催される気候変動枠組み条約の締約国会議であり、2月までに再提出することになっていた。

 既にノルウェーなどが提出しており、欧州連合(EU)は提出しなかったものの、目標を上積みする姿勢を示している。気温上昇を1・5度に抑えるには、50年に実質的に排出をゼロにすることが必要であり、これを目標として掲げる国も増えている。

 だが、日本は「30年度に13年度比で26%削減」との今の水準を維持。「50年に80%の削減」との長期目標も見直さないことを決めた。提出を見送った背景には、今後の取り組み強化方針に関わる記述で環境省と経済産業省の意見が折り合わず、さらには今、後ろ向きな目標を提出したら、厳しい批判を浴びるとの判断があるとみられる。

 前向きな削減目標を再提出するつもりがあるのならまだしも、その見通しは立っていない。理由はエネルギー基本計画や発電比率の見直しが進んでいないことなどが挙げられる。

 気候変動の専門家は、2度の気温上昇で異常気象が大幅に増加すると警告を発している。既に過去に例のない異常気象や、それに伴う自然災害が世界各地で多発。日本においても温暖化の進行が、経済や社会にとって大きなリスクであることを示している。

 主要排出国の日本の消極姿勢が国際交渉に悪影響を与える事態になれば、国際社会や投資家から批判を浴びるというもう一つのリスクにさらされかねない。

 原子力発電に過大な期待をする一方、再生可能エネルギーの導入目標は小さく、先進国に比べ普及は大きく遅れている。現行政策を見直し、国内外で石炭火力発電への依存を続ける姿勢も改める必要がある。野心的な削減目標を掲げることがビジネスチャンスにつながる道と捉えるべきだ。

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