宮城県気仙沼市のリアス・アーク美術館で学芸員として働く萱岡雅光さん

 壊れた食器、家電などの「被災物」をはじめとした東日本大震災の資料を常設展示する宮城県気仙沼市のリアス・アーク美術館に、福井県大野市出身の男性が学芸員として勤務している。他の学芸員らと共に「災害をいかに『自分事』にしてもらうか」という思いで震災を伝え、津波と向き合ってきた地域の歴史を紹介している。

 男性は萱岡雅光さん(30)。福井県立大野高校、富山大学と進み、筑波大学大学院中退後、岩手県の盛岡市教育委員会文化財調査員を経て、2014年4月にリアス・アーク美術館の歴史・民俗担当の学芸員になった。

 常設展示する震災関連の資料は約500点。中でも約150点におよぶ被災物は発生翌日から学芸員らが収集したもので、こうした体系的な展示は同美術館独自のものだという。気仙沼市の離島から流失し、福井県沖で発見された漁船も館内で保管されている。

 「どごが誰の家だが、さっぱり分かんねんだでば。そんでも、玄関だの、風呂場だののタイルあるでしょ。あいづで分かんだね」。被災物には、その物が持っていたかもしれない“物語”が、方言の語り口調で添えられている。萱岡さんは団体向けに常設展示の解説を担当する機会もあり「震災を『他人事』で終わらせず減災につなげるためには、感情移入や自分の身に置き換えてもらうことがまず必要」とその狙いを話す。

 震災発生時は富山大学の学生で、被災地は「テレビの向こうの世界」だった。同美術館で6年間勤務した今は「伝える立場の責任を感じる。当事者と思ってやっている」。専門の歴史・民俗の企画展を構築する際も、要素として人と自然災害の関係や減災を意識することが多いという。「ぜひ福井の人もリアス・アーク美術館を訪れてほしい」と話している。

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