新型コロナウイルスの影響で、休校となった福井県内の小学校

こんにちは。福井県越前市で、昨年まで探究型学習塾「ハルキャンパス」を運営していた、ゆるパブメンバーの森一貴です。

コロナウィルスの感染対策により、福井でも一斉休校がスタートしています。
しかし、なかなか情報がなく、この1ヶ月で何ができるのか、何をすべきなのか、悩んでいる親御さんや学生、教師の方々も多いようです。また、卒業式がなくなり、途方に暮れている人もきっといらっしゃいますよね。そんな方々に向けて、本記事が何か新しいきっかけをつかむ嚆矢(こうし)となれば幸いに思います。

■「たくさんの宿題」それでよいのか

“小4の娘は、山ほど宿題のプリントを持って帰ってきました”

福井新聞の記者の方から、そう伺いました。

この休校期間を「勉強の期間」として位置づけるなら、福井新聞の以前の記事を読んで実践していただければよいでしょう。
⇒長期休校、家庭で総復習のチャンス(福井新聞)

しかし、ただ「山ほどの宿題のプリント」を与えて、主体的に、意義のある時間を過ごせる学生はそう多くはありません。そんなことは、繰り返してきた夏休みや冬休みを通じて、皆さんも嫌というほど、ご存知のことと思います。

経済産業省「未来の教室」プロジェクトでは、facebook上でこんなメッセージを伝えています。

“「学校が閉まってるからって、学びを止めないで済む」そんな社会の実現に向けた挑戦だと、前向きに考えたらよいのではないでしょうか。”

そしてもうひとつ、秋田で教育ベンチャーを営む松浦真さんが、休校に触れて述べた言葉を伝えたいと思います。

“言いたいことは、学びは自由だということです。オンラインに縛られなくていいしコンテンツに縛られなくていいし、教科にもなにものにもしばられず、自由です。”

休校という絶好の機会だからこそ、この言葉を、学生や親や見守る立場の方々に抱きしめていただければと思います。そしてむしろ宿題が多い福井だからこそ、このコロナウィルスによる休校という機会を、宿題を超えた「まなび」の場として活用する方向性を、みなさんと考えられたら幸いです。

■オンライン学習をはじめてみよう

まず、ぜひ取り組んでみていただきたのがオンライン学習です。いま、EdTechという名前で、世界的にかつ爆発的に、いる場所に関係なく、まなべる環境が整いつつあります。この休校に際して、全国各地のEdTech事業者が、学生に向けて、次々に無料で自分たちのサービスを開放しています。(大人向けにも開放されているものも!)

いくつか紹介しましょう。

【小~高校生:進研ゼミ】
株式会社ベネッセコーポレーションが、「進研ゼミ」の小中高向け「春の総復習ドリル」を無償配布しています。
https://www.benesse.co.jp/zemi/homestudy/


【小~高校生:Z会】
Z会が、「Z会の通信教育」の一部を無料公開しています。

(小学生)
https://www.zkai.co.jp/muryoukyouzai-el/

(中・高・大学受験生)
https://www.zkai.co.jp/muryoukyouzai-ck/

探究学習アーカイブ
https://www.zkai.co.jp/home/sougou-inquiry/

【小学生:Gakken家庭学習応援サイト】
学研も「Gakken家庭学習応援サイト」を立ち上げ、各種学習コンテンツを無料で公開しています。
https://www.gakken.co.jp/homestudy-support/


【小~高校生:JACSTによる、科学技術のデジタルコンテンツ開放>
コロナウィルスの休校に伴い、JACST(科学技術広報研究会)が「休校中の子供たちにぜひ見て欲しい科学技術の面白デジタルコンテンツ」と題したコンテンツを開放しています。
天文学、海の研究、昆虫…など、専門領域の多様なコンテンツが目白押しです。
https://sites.google.com/view/jacst-for-kids/

【高校生:N高のオンライン授業】
豪華な講師陣による、オンラインをベースにした講座群で、爆発的に生徒数を伸ばしている通信制高校・N高のオンライン授業が無料開放されています。
高校の授業はもちろん、プログラミングや小説の書き方など、思いっきり打ち込める授業が満載。
https://nnn.ed.jp/news/blog/archives/10023.html


その他、コロナウィルスの休校に伴い開放されているサービス等は、以下よりご覧いただけます。
https://coeteco.jp/articles/10793#content_18

ほかにも、携帯のアプリでも取り組める学習サービスも少なく有りません。英語学習の「mikan」、地図学習の「あそんでまなべる 日本地図クイズ」、花まるラボの「Think!Think!」など、思わず集中して取り組んでしまうようなアプリも多く登場しています。ぜひ色々調べてみてください。

どれに取り組んだらいいかわからない!という人は、まずはどれでもいいので「なんとなく」で始めてみて、それを3、4日程度取り組んでみてください。合っているか、合っていないかは、やってみないとわからないものです。

さて、ここでぜひ気をつけていただきたいのが、「学校での勉強に資するかどうか」にどうか固執しないでほしい、ということ。むしろこの貴重な機会だからこそ、学校の勉強外のことに触れ、学ぶ機会にすべきです。

オンライン学習を受けられる環境があるなら、その画面の向こうに学校では知ることのできない、本当に広い広い世界があります。ぜひ、子どもの好奇心をとめることなく、プログラミングをはじめ、多様なまなびに取り組む機会を、各ご家庭で作っていただけたらと思います。

■小学生、親がついていられるならどう学習したらよい?

オンラインコンテンツがあることを知っていても、小学校低学年・中学年の学生が一人で取り組むのは、なかなか難しいものですよね。

もし親御さんが隣にいられる環境なのであれば、一緒に以下のような学習に取り組んでみてはいかがでしょうか。

◯ google mapやgoogle earthを使って、世界中のまちや世界遺産を探訪してみる。
◯ 電子機器を一緒に分解してみる。
◯ 好きなことの新聞を作ってみる。

せっかく福井にいるからには、福井ならではの資産も活用したいところです。

◯ 漆器、和紙、眼鏡、刃物、焼き物などの体験に行ってみる
◯ 「ふくのね」などを活用して、福井ならではの体験に行ってみる
https://www.jalan.net/activity/feature/fukui/?spCd=asb0155

「なるべく家の中にいなくてはいけないのでは、遊んではいけないのでは」と思い込んでいる親御さんも多いのですが、長期間にわたり家に閉じこもることは、むしろストレスの原因になります。手洗いうがい等に気をつければ、公園や、少人数の集まりに出かけることは問題ないとのこと。
https://www.mext.go.jp/content/202000309-mxt_kouhou01-000004520_4.pdf

むしろ外に出かけていきながら、この機会を、思い出をつくるための貴重な機会としても活用できると良いですね。

■中高生には、「出かける」学習がおすすめ

ここまで、オンライン学習や親子での学習の方法を提案してきましたが、実のことを言えば、この機会を通じて本当に取り組んでほしいのは「出かける」学習です。この機会を活用して「普段出会う機会のない人に出会う」こと。これが、特に普段、家と学校とを往復するだけの学生たちにとって、一番の「まなび」になるはずです。

中学生や高校生であれば、できればあえて図書館ではなく、福井にもいくつかある「コワーキングスペース」などへ訪れてほしい。そして、ぜひそこで働く大人の隣で勉強をしてほしいのです。

いま、福井でも生き方の多様性は、本当に大きく広がっています。働き方というだけでも、専業の会社員だけではなく、複業やフリーランスといったあり方が当たり前になってきている。しかし、家と学校とを往復するだけの生活では、そうした生き方に出会える余地はほとんどありません。

だからこそ、ぜひ出かけていってほしいのです。各地のコワーキングスペースも、きっと前向きに受け入れてくれることと思います。

コワーキングスペースについては、「ふくい若者ステーション」などをご確認ください。https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/joseikatuyaku/uthchallenge/wakamono_station.html

鯖江市にある筆者・森一貴の拠点(シェアハウス旧五兵衛邸 鯖江市別司町31-19)も、休校期間中は物件を開放しています。いつでもお越しください。

■卒業式がなくても、思い出はつくれる。

さて、実は休校で一番悲しんでいるのは、卒業式の機会を奪われた小学6年生、中学3年生、高校3年生の学生のみなさんだろうと思います。とりわけ高校3年生においては、全く異なる都道府県に進学するケースも少なくないでしょうから、きっと深く悲しんでいる人も多いでしょう。

しかし、ここでどうか「ああ、卒業式なくなってしまったな」で済ませないでほしいのです。卒業式がなくても、卒業はちゃんとデザインできる。思い出も、つくれるのです。

可能であれば、十分衛生管理には気をつけながらですが、小さくても卒業旅行を計画してみてください。県内でも、平泉寺、年縞博物館、熊川宿、三方五湖や河和田や今立。まだ行ったことない素敵なところ、たくさんあるはずです。

そしてもし卒業旅行がお金や、周囲の人の声で実現することが難しそうなら、試してみてほしいことがあります。それは「友達と一緒に、カメラマンに頼んで卒業写真を撮ってもらう」ということです。

きっとみなさん、カメラマンに撮影を頼んだことはないでしょう。しかし、福井にも、たくさんの素敵なフォトスタジオがあり、たくさんの素敵なカメラマンの方がいらっしゃいます。

決して安くはないかもしれないけれど、みんなでお金を出し合って、友達同士の思い出の場所や、大好きな場所を舞台にして、いつもの制服や、お祝いの服を着て、写真を撮ってみてください。むしろ卒業式よりずっとずっと楽しい、最高の思い出を残してもらえたらいいなと思っています。

■学校にも変革を

さて、学校側にとっても、コロナウィルスによる休校は単なる面倒事ではありません。きっと休校が明けたとき、この機会を好機と捉えて変わることのできた学校と、変われなかった学校とに、明暗はくっきりと分かれるはずです。

全国の国際学校では、当然のようにリモート学習が始まっています。こうしたリモート学習の環境が整備されていることは、グローバル環境下では既に常識です。
https://toyokeizai.net/articles/-/334400

しかし翻って、福井の学校はどうでしょうか。

子どもたちにとって、時間は有限です。ひとつひとつの授業が一度きりであって、その後の人生を左右しかねない力があるはずです。

国際学校ではリモートでの授業が行われています。しかし福井では、宿題だけが配られ、先生のサポートもないなか、一人で学習しなければならないのです。毎日毎日、刻一刻と、授業の時間が、まなぶ権利が奪われています。

上記でEdTech事業者のサービス提供について述べましたが、個人の学生向けだけではなく、学校向けにもこれらEdTech事業者によるサービス提供がスタートしています。

いま、以下のようなツールが無料で提供されています。コロナウィルスの影響下にある、今だからこそできることです。今変わらずに、いつ変わることができるのでしょうか。

◯ 休校中に保護者や学生とコミュニケーションをとることのできるツール:Classi、Studyplus for schoolなど
◯ オンライン授業配信ツール:SLAP、スタディサプリforTEACHERSなど
◯ オンライン教材:DMM英会話、Qubena、eboardなど
https://coeteco.jp/articles/10793


そうは言えども、福井の学生たちは今しばらく、自宅や図書館での勉強を続けなくてはいけないことと思います。そこでもうひとつ、こんな状況だからこそ、先生方と一緒に考えてみたいことがあります。

それは、福井の子どもたちが身につけている「学力」とは、なんだろう、ということです。

公教育の意義について論じた「教育の力」のなかで、教育哲学者・苫野一徳さんはこう述べています。

“現代のポスト産業社会においては、知識を「ため込む」力、さまざまなことを“まんべんなく”教え込み覚え込むことより、自ら考え自ら学ぶ力を持ち、絶えず「学び続ける」ことを求められている。”(苫野一徳「教育の力」p.51)

福井でまなぶ学生たちには、この休校という状況下においても「自ら学び続ける」ことのできる力は、果たして備わっているのでしょうか。

長期にわたる休校はきっと、その問いの答えを明らかにすることでしょう。この記事を読まれている先生がもしわずかでもいるなら、改めて私たちは、学生たちに自ら学び続ける力を伝えられていたのか、問い直し、省みることができたらいいなと思っています。

■苦しいときこそ、苦しい人々に目を向けられる世の中でありますように

長期にわたる休校や経済の停滞。こうしたコロナウィルスがもたらす緊急事態は、同時に社会に眠る「格差」をも痛烈に浮き彫りにします。

パソコンがあって、それを当たり前に活用できる家庭では、いま学生は当たり前にオンライン学習に取り組んでいて、次々に新しい知識を吸収しています。もしかしたら、家庭教師などを付けたり、美術館や博物館に訪れたりして、学校以上に濃密な時間を過ごしているのかもしれません。

一方で、例えばひとり親家庭では、休校によって仕事を休まなくてはいけなくなるケースも多々あるでしょう。貧しい家庭であれば、自宅にパソコンがないこともあるでしょう。非正規労働に従事する方々の中には、今回の騒動で仕事を失った人も少なくないでしょう。

しかし、こうした緊急時の格差が小さい社会こそ、私たちが目指してきた社会ではなかったのでしょうか。こういう苦しいときにこそ、既に苦しんできた人にしわ寄せがいかないような社会を、作っていかなくてはいけなかったのではないでしょうか。

一人ひとりは小さな力でも、なんとか想像力を働かせながら、なんとか声をあげながら、少しずつでもよりよい社会のためのアクションを続けあえることを願います。
 

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