長女が通うコミュニティーカレッジのメインキャンパスにある総合芸術系の学生が学ぶ校舎。植え込みのヤシの木が西海岸らしい雰囲気だ=2020年2月筆者家族撮影

 米国の大学はお金がかかることで知られている。年間の学費が、名門私立大学の場合は500万円以上、比較的安いといわれる州立大学でも数百万円必要なところもある。

 「高学歴のアメリカ人と結婚するときは、学生ローンをいくら抱えているか確かめないといけないですよ」。米国で国際結婚した日本人女性から真顔で聞かされたこともある。大統領選に向けた民主党の指名候補者選びで、「学生ローン債務全額免除、公立大学の学費無料」を掲げるサンダース氏が、若年層から支持を集めるのも不思議ではない。

 だが、大学教育の場として、ほかの選択肢も用意されているのが米国の良さだ。長女がロサンゼルス近郊で通っているのは、コミュニティーカレッジと呼ばれるタイプの大学だ。

 「ほぉ、それは一番親孝行な選択ですね」。ロスでかかりつけ医になった日系人ドクターは、娘の学校名を聞くなり、そう目を細めた。

 コミュニティーカレッジは公立の2年制大学で、全米に約1200校、カリフォルニア州は100校以上ある。もともと米国のコミュニティーカレッジは、地域住民のだれもが大学教育を受けられるように設立された。そのため、娘の大学も特別な選抜試験はなく、州の住民が入学する場合は、授業料に相当する費用が免除されている。

 「しかも、お嬢さんのカレッジはしっかり勉強をさせることで有名ですからね」とドクターは続ける。娘の学校はUCLAなど有力な州立大への高編入率をうたっている。ドクターによれば、米国ではこうしたコミュニティーカレッジで優秀な成績を取り、そこから4年制大学の3年次に編入するという進路を選ぶ学生はかなり多いのだという。

 学費の節約と、有名大に転入できる単位を取得するチャンス…。こう考えた若者が全米だけでなく海外からも集まってくる大規模なコミュニティーカレッジが米国各地にあり、娘の学校もその一つというわけらしい。広大なキャンパスに4万人以上の学生を抱え、校内のあちらこちらで日本人留学生の姿を見かける。

 帰り際、ドクターは諭すように娘にこう話した。「よく頑張った人と遊んだだけの人、今までどちらの日本人学生もみてきたよ。もちろん、頑張ったグループに入らなきゃ、ね」。

 チャンスの扉はだれにも用意する。だが、扉の先へ進むことができるかどうかは本人の努力あるのみ―。コミュニティーカレッジに米国の精神を垣間見た気がした。(渡辺麻由子)

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 夫に同行し米国生活する筆者が現地の生活をつづります。子どもを通して見えてきた教育事情や働き方の違いなどを紹介します。

 ■渡辺麻由子(わたなべ・まゆこ) 元福井新聞記者。結婚を機に福井を離れ、退職。夫の留学で2012~13年米国マサチューセッツ州で生活し、帰国後フリーライター・編集者として活動。夫の転勤で18年カリフォルニア州、19年からはメリーランド州で暮らしている。ハイスクール2年生の二女と、カリフォルニア・ロサンゼルスに残り、大学に通う長女がいる。

 ⇒アメリカでは運転免許取得も一苦労(人生は旅コラム)

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