【論説】安倍晋三首相が新型コロナウイルスの感染拡大防止に向け、小中高校と特別支援学校の一斉休校を要請してから1週間。「後手後手」の対応批判をかわすための「独断」との指摘がある中、現場は調整や準備不足で混乱を極めた。かえって国民の不安を増幅するようなことにならなかったのか、検証が欠かせない。

 自治体判断で要請と異なる対応を取る学校もあるが、萩生田光一文部科学相の参院予算委員会答弁によると、要請に関し5日朝の時点で99%の学校が休校状態を維持しているという。「急な要請だったので、各方面の皆さんに大変な負担を掛けた」とも述べたが、首相が真っ先に言うべきことだろう。

 一方で、幼稚園や保育所、放課後児童クラブ(学童保育)はそのまま続けられている。とりわけ、学童保育では親が休めない児童を預かるため、学校の空き教室も使って朝から開所。中には学校の教員も手伝いに加わるよう態勢を整えた所もある。幼稚園や保育所を含め、狭い室内で多くの子どもが過ごす状況は、学校と同じであり、担当者らの負担は重い。防疫上の整合性を説明できない首相の責任が問われる。

 中高校生らが街に出ていることを問題視する向きもある。ただ、遊びたい年頃の生徒らを縛るには無理がある。政府の専門家会議は、軽症や無症状の若者らが広範囲で動き感染を拡大させた可能性が高いとのデータ分析を公表。その上で10~30代にライブハウスやカラオケボックス、スポーツジムなどに行かないよう呼び掛けたが、どれほど届いただろうか。発信の仕方など工夫が求められる。

 子どもの世話で会社を休むことを余儀なくされた人は、正社員、非正規を問わず日額最大8330円が補償されることになった。しかし、自営業者やフリーランスは対象外という。一斉休校で不利益を被るのは同じだ。専門家からは、母子家庭などに配慮し、欠勤だけでなく勤務時間が減る人にも補償するよう求める声がある。政府は早急に再検討すべきだ。

 首相はここに来て、野党を巻き込んで、私権制限を伴う緊急事態宣言を出すことができる特別措置法改正にかじを切った。だが「瀬戸際の1~2週間」が過ぎるころに至って法整備することについては説明がない。重要なのは強硬手段の前に拡大を止めることだ。それは現行法でも可能ではないのか。

 一日も早く危機的状況を脱し、国民の不安を解消するためには、科学的分析に基づく有効かつ効率的な拡大防止策を早急に打ち出し、それを完遂できるよう、しっかりとした態勢を組み直すべきだろう。

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